2022 Fiscal Year Research-status Report
Formation of functional sheet by combination of carbon nanotubes and cellulose nanofibers
Project/Area Number |
22K04872
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
佐藤 英樹 三重大学, 工学研究科, 准教授 (40324545)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | カーボンナノチューブ / セルロースナノファイバー / 複合材料 / 機能性シート |
Outline of Annual Research Achievements |
カーボンナノチューブ(CNT)はナノメートルオーダーの直径を有するチューブ形状の炭素材料であり,高機械強度,良好な導電性など優れた特性を有する,フレキシブルな導電性材料である。またセルロースナノファイバー(CNF)は,木材を原料とする自然由来の再生可能材料で,セルロースをナノスケールのサイズまで解繊して得られる。CNT同様優れた機械的特性を有し,電気的には絶縁材料である。これらを組み合わせて複合化することにより,機械的に強靱でかつフレキシブルな新規機能性材料の創出が期待できる。本研究では,CNTとCNF複合化することにより,電気的特性が制御された新規機能性CNT/CNF複合材料の創製を目指す。さらに,CNTとCNFの複合繊維を紡績する方法を確立し,従来にない機能性繊維の創製を目指す。そしてこれらをフレキシブルエレクトロニクス応用へ展開することを最終目標として研究を行う。 当該年度は第一段階として,種々の条件でCNTとCNFをブレンドし,これをシート形状に成形したCNT/CNF複合シートを作製するための条件の基礎検討を行った。その結果,CNT/CNF複合シートを作製するための最適な条件が見出すことができ,数cm角の大きさのシートの作製に成功した。また,CNT/CNF複合シートの電気的特性の検討を行ったところ,CNFにブレンドするCNT量を調節することにより,シートの電気抵抗の制御を行うことにも成功した。さらに,紡績手法を用いたCNT/CNF複合紡織糸の作製に向けた基礎検討を実施した。その結果,CNT/CNF紡績を行うために解決すべき諸問題が明らかになった。現在のところ紡績糸作製の実現には至っていないが,前述の問題解決に向けた検討を行い。CNT/CNF紡績実現に向けた方策を立てることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の目標であった,CNT/CNF複合シートの作製に成功した。単層CNTや多層CNTなど,様々なタイプのCNTでシート作製を試み,どのCNTを用いても複合シートの作製が可能であることを確認した。以上より複合シートの作製のために必要な手順や詳細条件が明らかになり,大きさが数cm角の比較的高強度のCNT/CNF複合シートの作製が再現性良く行えるようになった。この方法はスケールアップが容易であり,さらに大きなシートの作製も期待できる。また,複合シートの電気伝導性のCNT/CNF混合比依存性を明らかにすることができた。CNFに対するCNT添加量の割合を増やしていくと,抵抗値は小さくなっていくが,ある一定量を超えると抵抗値は低下しなくなる傾向がみられた。一方で,種類の異なるCNTを用いた場合,また種類の異なる(製法が異なる)CNFを用いた場合では,同じCNT/CNF混合比でも電気伝導性が変化することが分かった。これはCNTの持つ導電特性のほか,CNT間の導電パスの形成にCNFの存在が影響していることが原因であると考えられる。さらなるCNT/CNF複合シートの導電性向上のための条件探索が今後の課題である。さらにCNT量はシートの機械強度にも影響を与えることが分かり,シート形成時において,CNFとCNTの混合割合を適切に制御することが必要であることが分かった。 一方で,紡績手法を用いたCNT/CNF複合紡織糸の作製については,当初想定していた手法ではいくつかの技術的課題があることが顕在化したため,当該年度に実施することはできなかった。しかしながらその実現のためのいくつかの重要な知見が得られたことは一つの成果であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,2022年度に作製が成功したCNT/CNF複合シートよりもさらに大面積のシートを作製し,その電気特性をさらに向上させるべく研究を継続する。電気特性の向上にあたり,2022年度に行ってきたCNT/CNF混合比などのさらに詳細な検討を行うとともに,シート内におけるCNTの配向性が影響を与えるため,CNTの配向性が制御されたシートの作製方法も検討する。また,シートの機械的特性の評価の実施も実施し,シートの製法がその強度に与える影響についても検討する。2022年度はCNTとCNFが均一に混合された溶液でシートを作製していたが,今後はCNTとCNFが積層化されたシートの作製を検討し,CNT/CNFシートのさらなる機能性付与法を検討する。 2022年度実現できなかった,紡績手法を用いたCNT/CNF複合紡織糸の作製については,2022年度に得られた知見に基づき,当初想定していた手法に加え,これとは別のアプローチによる方法の利用を検討し,実験方法や実験装置の再検討を行ってきた。これらについては既に準備に着手しており,今後の研究方針も明らかになっている。次年度には,これらについての研究を集中的に実施し,紡績法実現のための諸データの収集を行う予定である。
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Causes of Carryover |
購入を予定していた一部物品について,購入不要となったため残金が生じた。これについては,次年度の研究計画の見直しに伴い新たに購入の必要が生じる物品の購入に充てる予定である。
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