2023 Fiscal Year Research-status Report
プロセス統合による同心ヘテロナノチューブの高効率合成・構造分析・電子デバイス作製
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22K04874
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
井ノ上 泰輝 大阪大学, 大学院工学研究科, 助教 (00748949)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ヘテロナノチューブ / カーボンナノチューブ / 窒化ホウ素 / 化学気相成長 / ナノ材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題においては、異なるナノチューブ物質を同軸状に複合化した構造を持つヘテロナノチューブに関して、合成・分析・電子デバイス作製を高効率に行う基盤技術の確立を行う。 本年度は、まず、ヘテロナノチューブ合成のテンプレートとなる架橋カーボンナノチューブの形成法の高度化を実施した。水平配向単層カーボンナノチューブの合成、トレンチ構造基板へのウェット転写、臨界点乾燥、から成る工程において、トレンチ構造のパラメータ等の影響を調べた。酸化膜付きシリコン基板へのフォトリソグラフィとドライエッチングにより、異なるトレンチ構造を持つトレンチ基板を作製した。トレンチ長と隣接するカーボンナノチューブ間距離によるバンドル形成の有無を観察した。これにより、高密度な架橋カーボンナノチューブを形成し、これに基づくヘテロナノチューブを合成する方針を得た。本構造は電子デバイス応用において有用であると同時に、効率的な構造分析にも適しており、ヘテロナノチューブの成長機構に関する研究にも展開可能となる。 また、ヘテロナノチューブ合成のテンプレートとなる架橋カーボンナノチューブを得るための別の方針として、化学気相成長法におけるガス流を用いた直接架橋配向合成の実施も行った。これにより、高結晶性かつ清浄な架橋カーボンナノチューブを形成できることが示された。 さらに、高温安定かつ直接的な透過型電子顕微鏡観察を可能とする基板の作製をおこなった。グラファイトシートおよびカーボンナノチューブ薄膜を加工することで、これを実現した。本基板により、高温において窒化ホウ素ナノチューブの外層にカーボンナノチューブを合成することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、昨年度の成果に基づき、転写による架橋単層カーボンナノチューブの形成を行った。隣接するナノチューブ間のバンドル化を回避して孤立架橋を実現するための方針が得られた。さらに、ガス流を用いた化学気相成長による架橋単層カーボンナノチューブの形成も可能となったことから、その後のヘテロナノチューブの用途に応じて、密度や結晶性などの点で、適切なテンプレート構造を選択することが可能となった。また、高温合成と直接観察に適した基板の作製法も確立した。これらの状況から、本研究課題は順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題では、(1) 架橋CNTテンプレートの高効率形成、(2) 高耐熱基板の形成によるヘテロナノチューブの高温合成、(3) CNTとBNNTから成るトランジスタの形成と特性評価、の3点について並行して研究を実施する。 (1) については、本年度で概ね完了した。 (2)については、透過型電子顕微鏡(TEM)観察用グリッド構造の作製が本年度に可能とななった。今後は、本構造を用いて、高温におけるヘテロナノチューブの合成と直接観察を実施することで、ヘテロナノチューブの成長機構についての知見を得ることを目指す。 (3)については、窒化ホウ素層とカーボン層と交互の合成を実施するとともに、架橋用基板から平坦基板への転写法の確立、窒化ホウ素層とカーボン層の選択的エッチング技術の開発を行う。
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Causes of Carryover |
前年度にサンプル作製効率が想定以上に向上したことで消耗品費が減ったため、次年度使用額が生じた。翌年度分として請求した助成金と合わせることで、デバイス作製における実験回数を増加するための消耗品費と共用実験装置使用料に使用する。
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Research Products
(3 results)