2023 Fiscal Year Research-status Report
低分子を組み合わせてつくる分解性ナノ粒子の合成とワクチンへの応用
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22K04878
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Research Institution | Nippon Institute of Technology |
Principal Investigator |
新倉 謙一 日本工業大学, 基幹工学部, 教授 (40360896)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | クラウンエーテル / タンニン酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はタンニン酸誘導体と種々の低分子により複合体粒子を作製し、ワクチンへの応用を目指している。2023年6月に、低分子環状エーテルであるクラウンエーテルと中分子のポリフェノール(タンニン酸)から複合体をつくることができること、そしてその複合体が酸性条件下で分解することを日本化学会の速報誌で報告した。さらに、それらの組み合わせでつくる複合体について2つの重要なことを明らかにした。一つはカリウムイオンの効果である。我々が用いているクラウンエーテルはカリウムイオンに対して選択的に結合することが知られているが、このカリウムイオンが存在すると複合体形成が促進されることがわかった。他のアルカリ金属イオンよりも複合体促進効果があり、カリウムイオンを結合したクラウンエーテルへのポリフェノールの吸着能が高いことを示唆している。もう一つの発見は、クラウンエーテルとポリフェノールからなる複合体にウシ血清アルブミン (BSA)タンパク質が取り込まれるということである。複合体形成後にBSAを添加するよりも、BSA存在下で複合体形成を行うとBSAは取り込まれやすいことから、クラウンエーテルあるいはタンニン酸がBSAに結合し、複合体形成時にBSAが取り込まれていると考えられる。特にカリウムイオン存在下ではBSAの内包量が増した。同様の実験を環状のクラウンエーテルではなく、鎖状のオリゴエチレングリコールで行った場合、BSAは内包量は大きく減少した。タンパク質を内包できることは、環状エーテルとタンニン酸からなる複合体の大きなメリットであり、今後抗原タンパク質を内包できればワクチン利用への展開が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
学術論文を発表できた。タンパク質が複合体に取り込まれることから、新しい展開の可能性が見えた。
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Strategy for Future Research Activity |
複合体形成のメカニズムを化学的に解明する。またワクチン効果の基礎となる生物系の実験も行いたい。
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Causes of Carryover |
クラウンエーテルの化学修飾をまずは小スケールで行ったため、予定よりも経費を縮小できた。今後は大きなスケールでの実験の試薬購入に充てたい。
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