2022 Fiscal Year Research-status Report
Influence of external stimuli on cardiac development and cardiomyocyte function
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22K04892
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
三井 敏之 青山学院大学, 理工学部, 教授 (40406814)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 心臓 / 心筋細胞 / 自律拍動 / メカノバイオロジー / 同期現象 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、心臓をキーワードとして、心臓や心臓の細胞に外的刺激を与えて、その応答を短期的・長期的に観測することにより、心臓疾患のメカニズムから未病医学への応用につながるヒントを探る。そのために実験的研究は、細胞から心臓発生まで、多層的なスケールで行っている。本研究の独創性は、オリジナルな装置開発にも重点を置き、細胞スケールにおいて発生期の心臓細胞(心筋+繊維芽)にμメートルスケールで拍動に似た力学的刺激を与え、細胞の応答を観測する装置と構築した。22年度より、細胞自体の自律的な拍動のリズムと刺激のタイミングを制御するために高速画像処理によるリアルタイムフィードバック機構を装置に取り込み、実験に導入した。
本年度は、使用する細胞の発生期を5日目の鶏胚心臓に変更した。10日目より7日目の胚心臓のほうが刺激に応答する確率が高いことがわかっており、今回は更に早期の胚を利用した。特筆すべき結果は、5日目胚では、刺激のタイミングを予想される自律拍動のタイミングの直前に制御した際に、外的刺激が自律拍動を抑え、刺激のタイミングで拍動を持続することが確認された。7日目の胚ではあまり見られなかった。しかし、長期的に観測を続けると、典型的な集合体は刺激と別のタイミングでの自律拍動を起こした。そして、二つの拍動の競合により、一時的な拍動リズムが不安定化した。その後、10時間ほどかけて内在的な自律拍動のみが観察された。
心臓発生の研究は、OCT(光干渉断層計)鶏胚心臓へ化学的環境因子の与える影響を調べた。エタノールとカフェインの添加では、エタノールは心臓の拍動間隔を長くして、カフェイン添加は短くした。興味深いことに、一時的な添加にもかかわらず、その影響が数日にわたり観測された。それぞれの添加物が添加後に発生に影響を与え、心臓の形状に変化をもたらした可能性が示唆される。形状の詳細に観測する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は大きく分けて、①細胞スケールにおける、自律拍動のペースメイキングの可能性を高速画像処理によるフィードバック機構により探る。②OCT(光干渉断層計)による心臓発生のライブイメージングと、環境因子による発生への影響観測の二つである。
①は、フィードバック機構の付加は完了したが、現在は2フレーム分の時定数(応答までの時差)で動作するので、これを1フレーム分に上げたい。また、インキュベータ内の顕微鏡観測では振動によるノイズの除去も必要であった。22年度は、新規パーツの購入・設置を含めて、これらの装置改良にも重点を置いた。そして、新たに改良型の刺激装置を製作した。また、5日目の胚心臓に切り替えたので、改めてフィードバック制御なしの刺激も補足として行った。伸展の長さ、速さ、そして、周期をパラメータとして、フィードバック制御ありと比べた。
②は、エタノール添加による心停止が確認された。不整脈や心室の動きの異常が心停止の前に観測された。飲酒による先天性心疾患の誘発を直接観測した可能性がある。22年度は、より統計的な観測を行った。また、第二の環境因子としてカフェインを選んだ。カフェインが心臓の拍動間隔を短くするが、同様の現象を鶏胚の心臓でも確認した。こちらも一定の割合で心停止を起こした。心奇形など発生過程の形状異常の詳細を調べるために、OCTの時間・空間の解像度を上げる必要がある。22年度は、GHzのADDAボードにアップグレードを行い、ドライバーを構築した。機械学習を利用した鶏胚心臓の4D再構築像に関しては計画から遅れている。また、現在、発生過程の心臓への直接的な物理的外部刺激を与えるために、赤外線パルス照射装置を製作している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は、計画通りに、心臓や心臓の細胞に外的刺激を与えて、その応答を短期的・長期的に観測することにより、心臓疾患のメカニズムから未病医学への応用につながる研究を行う。
①は、5日目の鶏胚の心臓の細胞を使用してから、心臓の細胞の集合体の外部刺激の応答確率があがったので、その期の細胞における刺激実験を集中的に行う。リアルタイムフィードバック機構により、一度は拍動のリズムが外部刺激に依存するが、その後、刺激の影響を受けなくなる。このメカニズムを解明する。一般的に心臓がストレスを受けると、心筋細胞と共培養状態である線維芽細胞の筋繊維芽細胞への分化が起こる。その筋繊維芽細胞は、活動電位の伝搬を妨げる働きをする。本実験における線維芽への分化を調べる。また、22年度より、引き続き刺激装置の改良に努める。
②のOCTによる心臓のトモグラフでは、心臓の拍動が起こると、スキャンスピードの制限から、3D像のそれぞれのスライスが同位相ではなくなる。このため、心臓のポンプ機能を評価するためには、同位相のスライスだけを取り出して、3Dによる時間変化(4D)の動画を作成する必要がある。23年度には、この一連の画像処理を完成させることもゴールとする。この技術は、心臓疾患の形状だけでなく、拍動モーションの異常も関連があることが指摘されているため、必要不可欠な技術である。観測では、カフェインと成長速度の関係や、カフェインによる神経管の形成不全の観測も行う。カフェインが神経系へ与える影響は他の動物種でもしられており、OCTでは、直接観測が可能である。そして、引き続き発生過程の心臓への直接的な物理的外部刺激を与えるために、赤外線パルス照射装置を製作する。
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Causes of Carryover |
当初はインキュベーターとADDAを購入してOCT観察システムを新たに構築する予定でしたが、赤外線パルス照射システムの完成とインキュベーターへのレーザー導入方法の確立を経て、仕様にあった機器を購入したいと考えている。また、昨今の事情により、昨年は旅行を自粛していた。
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