2022 Fiscal Year Research-status Report
有機無機交互層状ハイブリッドペロブスカイト膜のシンチレーター機能に関する研究
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22K04905
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
赤城 嘉也 浜松医科大学, 医学部, 教務員 (30334981)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三浦 康弘 浜松医科大学, 医学部, 教授 (20261159)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 有機無機交互層状ハイブリッドペロブスカイト / ラングミュア・ブロジェット法 / インターカレーション法 / 元素置換 / 量子井戸構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,有機無機交互層状ハイブリッドペロブスカイトのシンチレーター(X線照射で蛍光を発する材料)としての最適な構造を解明することを目的としている。2022年度には,その目的を達成するための重要な前段階として,組成・構造を自在に変えて有機無機交互層状ハイブリッドペロブスカイト膜を作製する技術の確立に焦点を絞った。 その結果,オクタデシルアミン(ODA)のLB膜をヨウ化鉛とヨウ化水素酸の混合水溶液に浸漬するインターカレーション法により,層秩序の高い有機無機交互層状ハイブリッドペロブスカイト膜を作製することに成功した。しかしながら,初年度前半には,ハロゲン元素,金属元素を変えると,ヨウ化鉛/ヨウ化水素酸の混合水溶液の場合と同一濃度ではインターカレーションが進まない場合も少なくない,という問題が残った(水溶液の濃度を上げてインターカレーションを試みる場合,ハロゲン化金属の溶媒(水)への溶解度の低さが障壁となっていた)。 そこで,初年度後半には,インターカレーション法の適用が難しいハロゲン化金属については,先ず,母材の膜(ODA LB膜)にヨウ化鉛の層を水溶液からインターカレートし,その後,異種のハロゲン化水素(例:HBr)の蒸気に暴露することによるハロゲン元素の置換を試み,これに成功した。「LB膜作製-水溶液中でのハロゲン化金属のインターカレーション-蒸気相中でのハロゲン元素の置換」という三段階の製膜法である。このような経緯を経て,初年度に量子井戸構造を有する有機無機交互層状ハイブリッドペロブスカイト膜を,組成・構造を変えて自在に構築する技術を確立した。 これらの成果の一部は,既に2022年度に原著論文として掲載・公開されており,2023年度にも,国内外の学術的会合における複数の研究発表,および,原著論文続編の投稿を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,有機無機交互層状ハイブリッドペロブスカイトのシンチレーター(X線照射で蛍光を発する材料)としての最適な構造を解明することが目的である。現段階では,作製した試料のシンチレーター機能の評価には至っていないが,本研究の目的達成の鍵を握ると考えられる「有機無機交互層状ハイブリッドペロブスカイト膜の自在構築技術の確立」という点では,大きく進展している。従って次年度以降の研究の飛躍的発展が期待できる。研究は,おおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
先行研究によって,オクタデシルアミンのLB膜をヨウ化鉛/ヨウ化水素酸の混合水溶液に浸漬すると,オクタデシルアミンのLB膜の層間に[PbI6]八面体がインターカレートすることが指摘されていたが,その機構や膜の層構造については明らかになっていなかった。 本研究では,令和4年度に,XRDおよびFT-IRを用いた評価により,オクタデシルアミンのLB膜をヨウ化鉛/ヨウ化水素酸の混合水溶液に浸漬すると,秩序の高いヨウ化鉛系交互層状ハイブリッドペロブスカイト膜が作製できることを明らかにし,その層構造,および,形成機構を明らかにした。さらに,この膜を,別種のハロゲン元素のハロゲン化水素蒸気に暴露すると,ハロゲン元素を置換することができることも明らかにした。これらにより,これまで容易ではなかった様々な組成・構造の有機無機交互層状ハイブリッドペロブスカイト膜の作製が可能となった。 令和5年度以降には,この技術を基盤として,紫外線照射による発光特性の評価,さらに,X線,放射線照射による発光特性の評価に進み,当該物質系の組成・構造要素とシンチレーター機能の関係を解明する予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は,参加を予定していた国際会議がコロナ禍により延期となり,旅費・参加登録費が未使用となったこと,および,様々な組成・構造を持つ有機無機交互層状ハイブリッドペロブスカイト膜を作製する新奇な手法(ハロゲン化水素蒸気への膜試料の暴露による元素置換を用いる方法)を発見したため,当初予定していた光学吸収スペクトル測定系の構築を次年度に繰り下げ,膜試料の自在構築技術の確立に注力したためである。これらの経費は,2023年8月に順延された国際会議に参加して研究成果を発表するための旅費,および,発表データを補強するための実験経費(消耗品等),さらに,より広い波長範囲の光学吸収スペクトルのその場測定(インターカレーション中,および,蒸気への暴露中)を行うための測定系の構築の経費に使用予定である。
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