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2023 Fiscal Year Research-status Report

トポロジカル効果による非相反熱放射の解明

Research Project

Project/Area Number 22K04912
Research InstitutionHosei University

Principal Investigator

小鍋 哲  法政大学, 生命科学部, 教授 (40535506)

Project Period (FY) 2022-04-01 – 2025-03-31
Keywords非相反熱放射 / ワイル半金属 / トポロジカル効果 / キルヒホフッフの法則
Outline of Annual Research Achievements

プランクの熱放射則に並ぶ、熱放射における最も重要な法則の一つであるキルヒホッフの法則(熱平衡にある物体の吸収率と放射率が等しいという法則)を破ることができれば、高効率な光起電力発電や光・熱エネルギーハーベスティングが可能になる。本研究は、トポロジカル効果を利用した非相反熱放射によるキルヒホッフの法則の破れについて理論的に明らかにし、デバイス設計の指針を得ることを目的としている。昨年度は、物質としてはワイル半金属に焦点を当て、トポロジカル効果としては、表面状態であるフェルミアーク状態の集団励起(フェルミアークプラズモン)や異常ホール効果などによる非相反熱放射を検討した。しかしながら、その検討過程で、ワイル半金属特有のトポロジカル効果であるカイラル磁気効果により、さらに顕著な非相反熱放射特性が示されることに気づき、研究を進めた。その結果、カイラル磁気効果がある場合のワイル半金属の放射率公式を導出することに成功した。さらに、その放射率公式を用いて、ワイル半金属からの円偏光熱放射において、左右の円偏光に差が生じること(非相反熱放射)や、特定の周波数領域において放射率が負になることを明らかにした。これらの結果は、ワイル半金属の極めて特異な非相反熱放射特性を示すものである。本研究で得られたワイル半金属の非相反熱放射特性や負の放射率は、通常の物質では観測されないものであり、これまでにない熱放射エネルギーの利用につながると期待される。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

当初の研究計画では、ワイル半金属のフェルミアーク状態や異常ホール効果といったトポロジカル効果に基づいた非相反熱放射特性を明らかにする予定であったが、他のトポロジカル効果であるカイラル磁気効果がより顕著に特異な熱放射特性を示すことを明らかにした。カイラル磁気効果は当初の実施計画において注目していたトポロジカル効果とは異なってはいるものの、本研究課題の目的であるトポロジカル効果による非相反熱放射について重要な知見を得ることができたため、進捗状況としては「おおむね順調に進展している」とした。

Strategy for Future Research Activity

今後の推進方策として、当初の計画通り、ワイル半金属のフェルミアーク状態や異常ホール効果と非相反熱放射との関係を明らかにする研究を継続する。同時に、今年度に明らかになったカイラル磁気効果による非相反熱放射の研究を発展させることを計画している。具体的には、ワイル半金属に歪などを加えることによって生じる擬似磁場による擬似カイラル磁気効果の熱放射特性への影響をより詳細に調査し、新たな知見を得ることを目指す。これにより、研究のさらなる深化と成果の拡大が期待される。

Causes of Carryover

当初予定していた物理学会と応用物理学会に参加できなかったため、次年度使用額が生じた。次年度は、今年度得られた研究成果を国内・国外の多くの会議で発表する予定であるため、旅費として翌年度分として請求した助成金と合わせて執行する予定である。

  • Research Products

    (1 results)

All 2024

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results)

  • [Journal Article] Anomalous thermal radiation due to the chiral magnetic effect in Weyl semimetals2024

    • Author(s)
      Konabe Satoru
    • Journal Title

      Physical Review B

      Volume: 109 Pages: 085145-085145

    • DOI

      10.1103/PhysRevB.109.085145

    • Peer Reviewed

URL: 

Published: 2024-12-25  

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