2022 Fiscal Year Research-status Report
Electronic structures beneath IV semiconductor surfaces probed by photoelectron and luminescence spectroscopies
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22K04926
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
武田 さくら 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (30314537)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 空間電荷層 / 電子状態 / p型反転層 / 角度分解光電子分光 / カソードルミネッセンス / 発光分光 / Si(111) / Si(001) |
Outline of Annual Research Achievements |
空間電荷層を形成する10nm程度の厚さの半導体表面直下領域は電界効果トランジスタの要であり、また低次元電子系を研究する舞台として重要である。反転層内の電子状態は、第一原理計算で取り扱うことが極めて困難であり、これまで近似的に計算する手法はあったものの、精密な電子状態は明らかでなかった。本課題では、上述のようにこれまで未開拓の領域であった半導体表面直下領域に着目し、この領域に存在する特殊な電子状態を実験的に明らかにし、精密なモデルを構築することを目的とした研究を行っている。初年度は、これまでに手掛けてきたSi(111)表面直下p型反転層に加え、Si(001)表面直下p型反転層についても、角度分解光電子分光で得られた価電子バンド分散の量子準位を満たす反転層ポテンシャルの探索を通じ、表面直下でバンド湾曲が平坦になっていることを見出した。これは、Si(111)同様、表面直下に価電子の量子化によって胃生じる負電荷蓄積のためとして説明することが可能であり、ナノ構造では価電子内のキャリアをホール描像で捉えることができないことを示している。この成果をもとに本研究結果を取り入れた空間電荷層の電子状態の新しいモデル構築を行うことが可能となると考えられる。また、本課題が目的の一つに掲げる、伝導帯の情報を得るための電子励起発光分光については、まず試料とレンズの位置調整をシリコンの高温発光検出を通じて行う手法を確立した。得られた実験結果から、通説として知られてきたシリコン通電加熱に用いる電流と、シリコン温度が両対数グラフで直線となる関係が、350℃の低温領域まで適応されることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題では、これまでに明らかにしてきたSi(111)p型反転層に加え、Si(001)p型反転層についても、観測された量子準位から反転層形状を得ることに成功した。その結果、表面直下での反転層形状の平坦化がSi(111)p型反転層だけでなく、Si(001)p型反転層でも生じていることを明らかにした。これは、反転層形状の平坦化が結晶面方位に依存せず普遍的に生じる現象であるという本課題着想当初の予想と矛盾しない結果であり、本課題は想定通りおおむね順調に進展している。また発光分光については、足掛かりとなるシリコンでの高温発光のデータを得ることを達成していることから、おおよそ順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本課題では、未開拓の領域である半導体表面直下領域の特殊な電子状態を実験的に明らかにし、精密なモデルを構築することを目的とした研究を行っている。目的到達手段として、①実測量子準位から量子井戸(反転層形状)を導出する手法や、②発光分光等による伝導帯信号検出など、様々な実験及び解析の新手法確立が必要となる。まず①については、情報科学などを導入し、探索範囲の拡大、許容される反転層形状の同定などを行うことで、実測量子準位から量子井戸(反転層形状)を導出する手法の確立を目指す。②については、発光分光や2光子光電子分光など様々な手法を用いてシリコンの伝導帯バンドの検出を目指す。
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Causes of Carryover |
2022年4月に本課題で使用を予定していた反射高速電子回折の電源が壊れ修理が必要となった。当初発光分光の分光器購入を予定していた予算の一部を、この修理費にあてたため、残りの予算では分光器を購入できず、やむなく残りの予算と2023年度の予算を合算して分光器を購入することとした。このため、次年度使用額が生じた。
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Research Products
(9 results)