2023 Fiscal Year Research-status Report
Development of hydrogenated amorphous indium oxide-based transparent conductive oxide films with high mechanical flexibility
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22K04932
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
相川 慎也 工学院大学, 工学部, 准教授 (40637899)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | フレキシブル / 酸化物 / 透明導電膜 / アモルファス / 水素化 |
Outline of Annual Research Achievements |
Internet of ThingsやInternet of Human推進に向けた社会的要請が高まる中,機械的柔軟性とともに優れた電気伝導および光学的透明性を併せ持つフレキシブル透明導電膜への期待が高まっている.しかしながら,従来材料ITOは易結晶化材料であるため,このような用途に対して適しているのか定かでない. 本研究では,独自に開発してきたアモルファス性の非常に高いB含有In2O3透明導電薄膜を用いる.これまでの研究結果から,ITOに匹敵する電気的・光学的特性が得られることがわかったが,フレキシブル透明導電膜として応用するために,依然として,以下2つの課題を残す:(1)B含有In2O3薄膜のキャリア密度向上,(2)フレキシブル薄膜測定装置の改良. そこで,これらの解決のため,水素ドープによる成膜条件最適化,および薄膜の局所構造解析と構成元素含有量の定量評価を行うとともに,屈曲に伴う薄膜形態変化を明らかにし,さらなる機械的柔軟性の向上を目指す. 2022年度の実施状況から,水素ドーピングはキャリア密度を増加させ電気特性を向上させるものの,アモルファスであるにも関わらず柔軟性に対してはネガティブな結果になることがわかった.2023年度は,この理由を解明するため,特に膜密度の解析に注力した.X線反射率測定による膜密度解析にあたっての装置のセットアップや測定条件調整,得られたデータのフィッテングパラメータを検討した結果,水素ドープによる膜密度向上のエビデンスが得られた.しかしながら,水素導入による膜密度向上のメカニズムなど,まだ明らかとなっていない点がある.また,当初全く想定していなかった薄膜硬化が早期に判明したため,そのメカニズム追究に時間を要し,SIMSによる水素含有量の定量評価や水蒸気導入環境下での成膜などまだ実施できていない内容も存在する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時に予期していなかった半導体チップ供給不足や原材料費の高騰などにより研究の進展や備品導入などに影響が出ていたものの,研究遂行可能な物品が購入できたことから概ね計画通りに実施できる見通しが立った.その一方,研究開始当初に全く想定していなかった水素ドーピングによる薄膜硬化が生じたため,そのメカニズム追究に時間を費やしている状況である.そのため,計画書に記載のSIMSによる水素含有量の定量評価や水蒸気導入環境下での成膜など,まだ実施できていない内容があるのは否めないが,水素ドーピングによる薄膜硬化のメカニズムが明らかとなれば,研究が飛躍的に進展する可能性があるため,おおむね順調に進んでいると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度の実施状況から,水素ドーピングによる薄膜硬化のエビデンスが得られたため,引き続き,水素導入による膜密度向上のメカニズム解明を進めていく.また,実施できていないSIMSによる水素含有量の定量評価や水蒸気導入環境下での成膜を並行し,膜密度向上のメカニズムと関連して進めていく予定である. 上記に加え,従来材料ITOでも同様の水素ドーピングによる薄膜硬化が生じるのか,比較実験を行うことで知見を広げていく. 最終年度となる2024年度は,これまでに得られた知見を総合し,研究目的の1つである「機械的柔軟性をさらに向上させた透明導電酸化物薄膜の開発」のために必要なキーパラメーター探索にフォーカスしながら,計画に準じて研究を進めていく.その意味でも,膜密度と柔軟性の相関が見出されたのは意義深いと考える.
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Causes of Carryover |
当初計画では,2023年度にサンプルの観察・分析評価を外部委託するための予算を計上していたが,研究開始当初に全く想定していなかった水素ドーピングによる薄膜硬化のメカニズム解明にフォーカスしていたため,これに関する予算が執行できなかった.一方で,予算申請時に計画していなかった旅費が2023年度に発生した.これは,国際学会での発表のための旅費に用いた.当該国際学会は,アモルファス酸化物を中心とする薄膜トランジスタ(TFT)に関する国際会議であるが,本研究テーマであるフレキシブル酸化インジウム透明導電膜の開発において深く関係している.例えば,アモルファス酸化物表面の吸着分子は,そのTFT特性に影響を及ぼすが,酸化物透明導電膜においても同様の影響が考えられることから,申請テーマの進展に大きく寄与すると考え執行した.実際,研究テーマに関連する大きな知見が得られたとともに,新たな研究者ネットワークも構築でき今後の国際共同にも繋がる可能性のある実りある討論ができた.このような理由によって,当初計画より余剰金が生じたが,次年度に繰越し研究をより発展させるために効率的に使用する.
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Research Products
(43 results)