2022 Fiscal Year Research-status Report
全固体イオン伝導体酸化還元素子による強相関酸化物膜の抵抗スイッチング素子の開発
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22K04933
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
樋口 透 東京理科大学, 理学部第一部応用物理学科, 准教授 (80328559)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 全固体酸化還元素子 / リチウムイオン伝導体 / プロトン伝導体 / 抵抗スイッチング / イオンの挿入・脱離 / 二酸化バナジウム |
Outline of Annual Research Achievements |
現在使用されているパソコンや携帯電話の半導体メモリー素子は、微細化技術の向上により、高機能化・省電力化・小型化・大容量化が実現されてきた。しかし、ムーアの法則によれば、近い将来、微細化技術の限界を迎えるとされており、従来から新しい原理に基づく様々なメモリー素子が提案されてきた。 本研究では、強相関酸化物VO2膜上積層させたイオン伝導体固体電解質膜から成る全固体酸化還元トランジスタを作製し、イオンの挿入・脱離によりVO2の電気抵抗を制御することで、抵抗スイッチングを可能にする新規の素子を開発することが目的である。 2022年前期は、VO2及びイオン伝導体固体電解質(LiCoO2)の膜を安定的かつ再現性良く作製するためのスパッタ装置の整備を行った。 2022年後期は、Al2O3基板上にVO2LiCoO22の各膜を作製し、種々の成膜条件の検討から、基板温度700℃、成膜圧4mTorrにて安定的に配向膜が出来ることをX線回折と放射光光電子分光による構造・価数評価により評価した。また、全固体トランジスタ化を想定して、VO2/LiCoO2多層膜を作製し、LiLixVO2が生成による絶縁体化を明らかにした。この結果は、放射光X線光電子分光やX線吸収分光によるFermi準位近傍の電子構造の結果からも確認できた。この結果は、全固体酸化還元素子において、電圧印加に伴うLiイオンの挿入が可能であることを示唆しており、当初の狙い通りの結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は、全固体酸化還元素子のベースとなるVO2・LiCoO2の各層が再現性良く作製でき、この素子を想定したVO2/LiCoO2多層膜でも、系統的な成膜条件の検討により、Liイオン挿入によるLixVO2層を作製できた。これは、当初の狙い通りであり、2023年度に行うトランジスタ化の足がかりとなる非常に重要な結果であるとみている。この理由のため、研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、Liイオン挿入によるLixVO2層を作製できたことから、混合価数状態を持つVO2膜内にLiイオンが成膜段階で挿入できたことを示唆する結果である。この段階で、Liイオンが挿入されたことから、2023年度は、実際にソース・ドレイン・ゲートPt電極を配置したPt/LiCoO2/VO2/Ptデバイス構造を作製し、ゲート電圧印加により、VO2の電気特性がどのように変化するかを検証する予定である。
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