2023 Fiscal Year Research-status Report
全固体イオン伝導体酸化還元素子による強相関酸化物膜の抵抗スイッチング素子の開発
Project/Area Number |
22K04933
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
樋口 透 東京理科大学, 先進工学部物理工学科, 准教授 (80328559)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 全固体リチウム酸化還元素子 / 二酸化バナジウム薄膜 / 抵抗スイッチング |
Outline of Annual Research Achievements |
現在使用されているパソコンや携帯電話の半導体メモリー素子は、微細化の限界を迎えており、将来的に、これまでは異なる原理で動作する高機能化・省電力化・小型化・大容量化を兼ね備えた新しいメモリー素子の開発が急務とされている。本研究の目的は、強相関酸化物VO2膜上積層させたリチウムイオン固体電解質膜から成る全固体酸化還元素子を作製し、イオンの挿入・脱離によりVO2の電気抵抗やキャリアー密度を制御することで、可逆的な抵抗スイッチングを実現するすることである。 2023年前期は、種々の条件下で作成したVO2-LiCoO2多層膜について、X線回折・電気抵抗やHall係数の温度依存性を評価し、LiやOイオンがVO2膜の電気特性及ぼす影響を検証した。この多層膜において、リチウムイオン伝導層のLiイオンがVO2層に拡散し、LixVO2膜としてふるまっていることを、電気特性と光電子スペクトルの形状から明らかにした。 2023年後期は、Al2O3基板上にVO2/Li-Sr-Zr-O系およびLiCoO2の各膜を積層させてトランジスタ化し、抵抗スイッチング現象の再現性について、慎重に評価と検討を行った。ゲート電圧印加により、単結晶に匹敵する約4桁の抵抗変更変化を示した。この結果は、全固体酸化還元素子において、電圧印加に伴うLiイオンの挿入が可能であることを示唆しており、前期までの予測した基礎的な知見とほぼ一致する挙動を確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来、VO2薄膜の再現性を得ることが難しいとされたが、2022年度のスパッタ装置の高性能化により、安定的に金属―絶縁体転移を有する薄膜の作製が可能になった。このことにより、リチウムイオン伝導体膜の積層化も容易になり、再現性のある素子を作製することができた。ただ単にデバイスを作製して評価するのではなく、結晶構造・キャリアー密度・電子構造などの基礎的な知見を活かした素子であり、素子の動作についても、ほぼ予測通りの挙動を確認できている。2024年度で、メモリー素子として評価を行う上で、十分な準備ができており、現状、研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
現状、VO2薄膜およぼリチウムイオン伝導体膜の作製とデバイス化はほぼ確立できている が、スパッタ装置内の残留ガスや不純物の混入を防ぐためには、装置の定期的な保守を欠かさずやっていくことが重要である。また、2024年度で、メモリー素子としての性能評価を行っていくが、絶縁破壊を起こさないように印加電圧を最適化し、高集積化のためにより微細な素子構造を進めていくことで、実デバイスとしての比較・検討ができるのではないかと考えている。
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