2022 Fiscal Year Research-status Report
量子ビーム実験と構造モデリング、トポロジカル解析が協奏した硫化物ガラスの構造研究
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22K04950
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小野寺 陽平 京都大学, 複合原子力科学研究所, 助教 (20531031)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ガラス / 構造 / 量子ビーム回折 / 構造モデリング / トポロジカル解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、酸化物ガラスに比べて優れた材料特性を発現する可能性を秘めた硫化物ガラスを対象とし、量子ビーム実験、コンピュータシミュレーション、トポロジカル解析の融合による硫化物ガラスの構造機能相関の解明を行うことを目的とする。 2022年度は化学的耐久性の低い硫化物ガラスを高品質で合成するための実験環境の整備を行なった。既設のグローブボックスに不活性ガスの循環精製システムを接続し、水分および酸素濃度がともに1ppm程度の高純度ガス雰囲気での試料合成環境を実現した。さらに、高純度ガス雰囲気下でのメカノケミカル合成によって、SiS2、P2S5といったガラス試料の合成テストを実施した。市販の化合物試薬を出発原料とした合成によって得られた試料においては著しい水分の混入と酸化が確認されたことから、高純度のシリコンやリン、硫黄といった単体の試薬を出発原料として用いたガラス試料合成を行なった。 試料合成と並行して、密度測定を不活性ガス雰囲気下で行う準備を進めた。密度は精密な構造解析を行う上で非常に重要な物性値であるが、吸湿性かつ大気中で不安定な硫化物ガラス試料の密度を通常のアルキメデス法や、大気中でのガス置換法で行うことは極めて困難である。本研究ではガスピクノメータを高純度不活性ガスを循環させたグローブボックス中に設置し、試料を大気に晒すことなく密度を測定できる実験環境を構築した。酸化物ガラスを用いたテスト測定を行った後、硫化物ガラスの測定を実施していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は試料合成環境の構築とそれを用いた試料合成を実施した。量子ビーム実験は2年度目に実施することになったが、実験環境の構築を丁寧に進めたことによって、水分の混入と酸化を極限まで抑制した硫化物ガラスの合成に成功したと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
得られた硫化物ガラス試料について、高輝度放射光施設SPring-8において高エネルギーX線回折実験を、大強度陽子加速器施設J-PARCのパルス中性子施設MLFにおいて中性子回折実験を行う予定である。回折データの解析は、ガラス試料については二体分布関数の導出による実空間での解析(PDF解析)によって行なったのち、回折データを基にした逆モンテカルロ法と分子動力学法を組み合わせた構造モデリングによってガラス3次元構造モデルの構築を進める。 構造解析が完了次第、論文執筆に着手し、学会発表を行うとともに成果の創出を進めていきたいと考えている。
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