2023 Fiscal Year Research-status Report
重水素化多層膜の室温原子層堆積で実現する光増強型光ポンピング原子磁気センサ
Project/Area Number |
22K04970
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
熊谷 寛 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (00211889)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 光ポンピング原子磁気センサ / 室温原子層堆積 / 重溶媒 / フレネル反射損失 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の2年目では、まず、石英ガラスセル内壁の至る所に、しかも均一に原子寸法精度の堆積を実現した。ルビジウムを封入するため、石英ガラスセルへのアルカリ金属蒸気の充填システムを重水素化薄膜コーティングシステムと真空一貫で接続した。磁気光学回転を利用した偏極スピン緩和時間計測システムにより、重溶媒依存性、重水素化率依存性、緩衝ガス種依存性、緩衝ガス圧依存性を調べ、明らかにした。室温原子層堆積装置はすでに開発済み。Rbの共鳴周波数に同調、離調できる外部共振器型半導体レーザーを用い、レーザー光を分割し、ポンプ光およびプローブ光として利用し、スピン緩和時間を明らかにした。次に、重水素化薄膜の膜厚を原子寸法精度で制御し、偏極スピンを緩和する双極子-双極子相互作用を精密制御した。アルカリ金属原子と重水素化薄膜表面との近接相互作用の詳細を研究した。偏極スピンとセル内壁表面との相互作用に起因する、アルカリ原子間のスピン交換衝突レート、蒸気セルを横切る磁場勾配による緩和レート、他のアルカリ原子・第3体の緩衝ガス原子とのスピン破壊衝突による緩和レート、光ポンピングレート、プローブ光の光吸収レートなど各緩和レートの最小化を追求した。その上で、アルカリ原子セルの内壁との衝突による偏極スピン緩和レートの重水素化薄膜の膜厚依存性、重水素化薄膜の膜質(重水素化率)依存性、原子セル温度依存性を調べ、偏極スピンとセル内壁表面との相互作用を明らかにし、緩和メカニズムを研究した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初目標としていた、石英ガラスセル内壁の至る所均一の重水素化薄膜コーティング、偏極スピンとセル内壁表面との双極子-双極子相互作用の研究を実現した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、新たに光増強型共振器を開発し、緩和防止・無反射多層膜を内外壁にコーティングした原子セルを光増強型共振器に挿入し、フレネル反射損失や表面散乱損失を十分に抑制し、光増強できることを明らかにする。
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Causes of Carryover |
当該年度では、当初計画された研究開発が、消耗品の管理と効率の良さから予算内で概ね順調に進行した。消耗品費の節約が可能となり、その結果として助成金が予定額より残り、次年度に繰り越しできた。 次年度では、残余助成金を活用して、研究開発の質をさらに向上させ、早期に具体的な成果を生むべく、研究を遂行する。 新たな消耗品の導入や光学機材のアップグレードにより、実験精度の向上を図る。
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