2022 Fiscal Year Research-status Report
Development of 1um-wavelength-laser-pumped ZnSe mid-infrared wavelength-conversion devices
Project/Area Number |
22K04971
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
庄司 一郎 中央大学, 理工学部, 教授 (90272385)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 中赤外レーザー / 波長変換 / 常温接合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では高出力な1 um 帯レーザーで励起可能な波長変換デバイスを開発し,従来よりはるかに高効率・高出力な中赤外光発生を実現するために,セレン化亜鉛(ZnSe)プレートを多数枚積層した擬似位相整合構造を,常温接合技術を駆使して作製することを目的としている. 本年度はZnSeプレート同士を高品質で接合する条件の最適化を行った.常温接合ではプレート表面を平坦性0.3 um 以下,粗さRa < 1 nm に する必要がある.励起光波長1 um の中赤外波長変換の場合,1次の擬似位相整合条件を満たすZnSeのプレート厚さは20~40 um程度と薄く上記条件を満たす研磨が困難となる.そこで,本研究では3次の擬似位相整合となる厚さ60~120 umのプレートを用いる.ZnSeは高価であるため,まず厚さ106 umのGaAsプレートを多数枚用意し接合条件の検討を行った. これまで,試料はステンレス製の治具上に直接設置していたが,治具表面の平坦性は試料の平坦性に比べ1桁程度悪く,厚さ100 um 程度以下の薄いプレート試料同士を加圧・接合すると,治具表面のうねりに沿って試料表面が変形する.この試料にさらに別のプレートを接合すると,界面に隙間が生じ透過率が低下してしまう.そこで,治具に直接設置する代わりに,レーザーグレードに研磨し平坦性の高いYAG 結晶の上に試料を置き,接合を行った.また,アルゴン原子ビームの照射する際,上下に対向して配置するプレートの間隔を調整し,ビーム強度の最も大きいところに試料表面が来るようにした.その結果,短時間で表面活性化が行えると同時に接合強度も向上した. これらの最適化を踏まえて10枚積層構造を作製したところ,波長10.6 umにおける1接合界面あたりの散乱損失が従来の0.9 %から0.4 %に改善し,高品質化に成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度はGaAsプレートを数百枚使用し,接合条件を様々に変えながらプロセスの最適化を図ったため,ZnSeプレートの接合にまでは至らなかった.したがって,当初計画よりやや遅れているが,GaAsを使用して得られた知見はそのままZnSeにも適用できるため,次年度はZnSeプレートを用いた高品質な積層構造の作製を円滑に遂行できるものと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
まず,前年度行ったGaAsプレート積層構造作製で得られた知見をもとに,ZnSeでプレート10枚積層構造を作製する.散乱損失がGaAsの場合と同程度以下であることを確認する.次に,50枚以上の積層構造の作製を目指す.これまでは単純に1枚ずつ追加接合していくか,10枚積層構造同士を接合するかのいずれかの方法で多数枚積層構造を作製していた.しかしながら,これらの方法では枚数が増えるほどプレート表面の変形が蓄積し,接合品質が劣化する.そこで本研究では次のプロセスによる方法を試みる.(i) 10枚積層構造の1枚目と10枚目は厚さ500 um程度のプレートを接合する.(ii) 10枚積 層後に1枚目と10枚目を他のプレートと同じ厚さまで平坦性よく研磨する.(iii) これらの10枚積層構造同士を多数作製し,それらを互いに接 合することにより,高品質な50枚以上の積層構造を実現する. まずはGaAsを用い,上記方法により50枚以上の積層構造を作製し,評価する.良好な接合を実現できることを確認した後,ZnSeを用いて同様に作製を行う.波長変換による評価として,QスイッチNd:YAG高出力パルスレーザー(波長1.064 um)を励起光源として光パラメトリック発生実験を行い,ZnSeとGaAsとで変換効率を比較する.ZnSeに比べ, GaAsでは1 um帯励起による2光子吸収が生じるため,変換効率の低下や,高出力励起による光損傷も生じることが予想される.それらを定量的に比較し,ZnSeの優位性を検証する.
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Causes of Carryover |
本年度はGaAs結晶を用いて研究を行い,ZnSe結晶の購入を見送ったため当該助成金が生じた.次年度は本年度購入予定だった分と合わせてZnSe結晶を購入する予定である.
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