2022 Fiscal Year Research-status Report
蛍光タンパク質の光褪色過程の解明に向けた光明滅サイクルの過渡応答解析
Project/Area Number |
22K04972
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
須田 亮 東京理科大学, 理工学部物理学科, 教授 (80250108)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 蛍光タンパク質 / 光明滅 / 光褪色 / 多光子励起 / 蛍光顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
蛍光タンパク質の光褪色現象はさまざまな蛍光観察の障害であり、その改善が切望されている。しかし、詳細は未だ明らかにされておらず、現状では励起光強度を下げて光褪色を避けるなど当座しのぎの対応がとられているに過ぎない。申請者らはこれまで、可逆的な光明滅(ブリンキング)サイクルにおいて、蛍光分子が暗状態に滞留する時間が長いと、見かけ上、光褪色のように振る舞うことを示した。 本研究課題では、この光明滅過程について定量性のある実験をもとに過渡応答特性について解析を行い、光明滅サイクルから離脱して真に光褪色に至る蛍光分子の収率を求めることを目的とする。 本年度は、緑色蛍光タンパク質を一光子および二光子で励起することにより、それぞれ光明滅に伴う蛍光強度の過渡応答を観測し、結果を解析して光褪色に至る経路について考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
cw光を用いた一光子励起では、連続照射による蛍光強度の減衰曲線と間欠照射による回復曲線をさまざまな励起光強度において取得した。測定結果と励起状態吸収 (ESA)を含む5準位系モデルをもとにした解析結果と比較して、各準位の速度定数と寿命を求め、光明滅サイクルのモデル化を行なった。また、光褪色はESAが関与する三重項励起状態から引き起こされていることを示唆する結果を得た。 さらに、二光子励起においても過渡応答を観測し、光褪色が一光子励起の場合より速いという結果から、改めてESAの関与が示唆された。しかし、過渡応答の波長依存性の取得を試みたが、評価を行うに十分な結果を得ることができなかった。蛍光タンパク質の二光子励起に十分な強度を確保した上で過渡応答が測定できれば、ESAに関してさらなる知見が得られるものと考える。 また、光明滅サイクルモデルの確立のために燐光の過渡応答の観測を試みたが、十分な強度が得られなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
二光子励起による蛍光強度の過渡応答の観測において信号対雑音(SN)比が低かったため、波長依存性を評価するのに十分な結果を得ることができなかった。これを改善するため単一光子計数(フォトンカウンティング)モジュールを使用して、再度測定を試みる。結果が思わしくない場合は、一光子励起において励起波長を変えて波長依存性を取得する。そのためには、各種GaN系レーザーダイオードを調達し調整する必要があり、二光子励起の単一光子計数計測と並行して準備を進める予定である。
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Causes of Carryover |
令和4年度に購入予定であったDPSSレーザーをより安価なGaN系レーザーダイオードで置き換えた。従来、レーザーダイオードはビーム品質に難点があったが、容易に整形できることが判明したため、これを採用した。また、チップの交換のみで波長を変えられることから、次年度以降は各種GaN系レーザーダイオードを取りそろえて用いることにした。
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