2022 Fiscal Year Research-status Report
高アルカリ炭酸塩形成環境における微生物活動と鉱化作用
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22K05014
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
宮崎 征行 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(超先鋭研究開発プログラム), 准研究副主任 (50399573)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 炭酸塩 / カルサイト / マリアナ前弧域 / 蛇紋岩 / 強アルカリ |
Outline of Annual Research Achievements |
深海における炭酸塩形成に関する微生物についての研究は、サンプル採取の困難さからほとんど行われていない。そのため環境微生物学と微生物培養学を掛け合わせて現場環境に生息する微生物の実態をとらえ、炭酸塩形成に関わる微生物材料の開発を行うことを目的とした。 初年度は培養手法の検討と分離源となるサンプル採取について行った。まず深海に炭酸塩形成菌の存在を確認するため、過去に得られた深海堆積物やチムニーを植種源として使用した。培養手法は従来の方法を踏襲した高濃度カルシウム塩と尿素をベースとした寒天培地を作成した。植種源について約30種類を培養に用いたが、相模湾の冷湧水域から採取した堆積物から炭酸塩形成菌の存在が明らかとなった。このことから、深海底においても炭酸塩形成菌のポテンシャルが示唆された。 陸域にアルカリ温泉があるように、深海にもアルカリ湧水が湧き出ている場所が存在する。深海環境にも炭酸塩が形成する場が観察されている。太平洋のマリアナ前弧に位置する南チャモロ海山は、ブルーシストを伴う蛇紋岩泥火山が存在し、2001年に実施されたODP掘削により、山体の間隙水がpH 12を超えるアルカリ性であり硫酸を豊富に含むことが明らかにされた。2023年2月末から3月末に海洋研究開発機構所有船舶「かいれい」及び「かいめいROV」や着座式掘削装置を用いてマリアナ前弧域における海底泥のサンプリングに成功した。実サンプルを用いた培養は2023年度以降に行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の計画としては培地の検討並びサンプル採取が目的であり、炭酸塩形成菌の存在確認とマリアナ前弧海域からのサンプルリターンに成功した。このことから一定の成果が認められるため、おおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
マリアナ前弧海域から採取したアルカリ性蛇紋岩泥からの炭酸塩形成菌の分離を行う。方法としては、従来法の好気による寒天培地を用いた培養を行う。また、2022年度に立ち上げられなかった連続培養での培養を行う。分離源としてはアルカリ性の蛇紋岩泥や培養に成功した相模湾冷湧水などを用いる。また、X線回折法を用いた分析を行い、形成した炭酸塩について同定を行う。
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Causes of Carryover |
培養方法の検討(嫌気培養及び連続培養)に用いる装置・機器の購入が遅れた為、次年度使用額の変更が生じた。
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