2023 Fiscal Year Research-status Report
液滴レーザーの開発と液滴表面ダイナミクス解明への応用
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22K05026
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
河野 淳也 学習院大学, 理学部, 教授 (90557753)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 液滴レーザー / 共振増強 / 角度分布 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,溶液表面分子の構造とその変化を高速,超高感度に観測することを目的とする。そのため,液滴表面の分子からの発光を液滴共振,回転楕円体ミラーを用いた外部共振器とのカップリングによって2重に増強し,コヒーレント光(レーザー)として取り出す,液滴レーザー技術を開発する。2022年度までに回転楕円体ミラーによるフィードバック光学系の構築と基本性能の測定を行い,フィードバックによる液滴蛍光の2.6倍の増強を確認した。一方,回転楕円体ミラーによるフィードバック光は十分な集束が得られないことも新たに判明した。そこで,2023年度は液滴蛍光の角度分布を測定し,レンズとミラーによるフィードバック光学系を設計した。具体的には,以下の研究成果を得た。 (1)懸垂液滴蛍光の角度分布測定:フォトダイオードを用いた小型光検出器を設計・制作した。その検出器を懸垂液滴の回りに回転できるようにステージ上に設置した。液滴蛍光の強度をレーザー照射方向との角度を変えながら測定した。その結果,直径0.6 mmの懸垂液滴においては,90°おきに蛍光が強くなる角度が存在することがわかった。 (2)レンズ・ミラーによる外部共振器の構築:レーザー照射方向に対して90°おきにレンズ・ミラーによるフィードバック光学系を3つ設置し,外部共振器を構築した。レーザー照射方向にはフィードバック光学系が設置できないため,観測光学系と30°の角度をなす方向からレーザー光を照射する設計とした。 (3)外部共振器によるフィードバックの観測:濃度200 μMのローダミン6G/エチレングリコール溶液をキャピラリー先端からシリンジポンプで押し出し,懸垂液滴とした。液滴の側面にNd:YAGレーザーの第2高調波を照射し,共振増強光を生成した。蛍光画像の観測から,外部共振器によるフィードバックによる増強が観測できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3方にレンズ・ミラーを配置して構築した共振器の中で懸垂液滴にレーザー光を照射し,液滴共振増強蛍光を発生させることに成功した。また,共振器によるフィードバックによる蛍光の増強が観測できた。しかし,蛍光の増強は現在のところ約1.1倍にとどまっており,レーザー発振を観測するには至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)外部共振器の最適化:前年度に開発した外部共振器について,光学素子の配置,位置調整を精密化し,高効率化を目指す。 (2)液滴レーザー用の微小液滴ノズルの開発:懸垂液滴よりも小さなサイズの液滴によるレーザー開発を念頭に,液滴ノズルの開発を行う。必要性能としては,(1)レーザーとの同期,(2)共振器への導入を可能にするための先端の先鋭化,(3)ノズル詰まり対策のための交換容易性がある。これらを実現するため,キャピラリー先端を加工して液滴噴出孔を作成し,それをピエゾ駆動することによる液滴ノズルを設計・開発する。 (3)自作液滴ノズルを組み込んだ液滴レーザーの設計:自作ノズルからにレーザーを照射したときの蛍光の角度分布を測定し,最適な外部共振器を設計する。その共振器を用いて液滴レーザーの開発を目指す。
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Causes of Carryover |
必要額が予算と完全には一致しなかった。
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