2022 Fiscal Year Research-status Report
Development of automated path search methods for reactions including spin-inversion
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22K05031
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
高柳 敏幸 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (90354894)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | スピン反転 / 密度汎関数法 / 反応機構 / 反応経路探索 / 反応動力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、アセチレン3分子から3量環化反応を通して直接ベンゼンができる反応経路についての研究を行った。用いた密度汎関数理論計算では、安定なスピン状態解となるように常に電子軌道を最適化し、これによって滑らかなポテンシャルエネルギー曲面が得られることを確認した。研究当初は触媒として3d遷移金属イオン(FeとV)を選択し、これらの金属触媒ではスピン反転機構が重要であることを見出した。その後氷クラスターや簡単な配位子を付けた遷移金属化合物を触媒としたアセチレン3量環化反応について網羅的に研究を行った。その結果、配位子と変えることで、スピン反転が起こらないようにできること、また反応経路をある程度コントロールできることを見出した。特に重要な点は、これまでの理論研究ではアセチレン3分子からベンゼンが生成する過程は少なくとも2段階からなる多段階過程で起こるとされていたのに対し、NCアニオンやFアニオンを配位子として利用すると、ベンゼンが一段階で生成することを初めて見出したことである。また、配位子を氷クラスターとしてもどうような反応が起こることを見出した。こうした反応経路計算結果をさらに確実にするために、分子動力学計算も行い、反応経路とダイナミクスの関係についても考察した。また、スピン反転については、非断熱量子波束理論による解析も行い、非断熱遷移確率が1次元近似では記述できないことも見出した。これら一連の研究成果は4報の国際ジャーナルに掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
アセチレン3分子からベンゼンができる反応の研究について新しい発見があり、すでに4報の論文が国際ジャーナル誌に掲載されている。さらに現在も新しい論文の投稿準備を進めているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
アセチレン3分子からベンゼンができる反応を重点的に研究したことで、直接は関連しないと思われていた星間分子の反応機構の解明につながる可能性があることが分かった。そこで、星間分子と関連させたスピン反転触媒反応について中心的に研究を進める予定である。具体的には、アセチレン分子を星間空間に見出されているHCNやHNCに置き換えた理論計算を行う。その結果、ベンゼンだけでなく、ピリジンなどのヘテロ原子を含む環状化合物の生成機構についての考察が可能になる。また、これまで鉄やバナジウムなどの遷移金属を中心に研究を行ってきたが、今後はそれを他の遷移金属原子へと発展させることを予定している。
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Causes of Carryover |
新型コロナ流行の影響で、学会参加のための旅費が予定額より少なくなったためである。一方研究に必要な物品等はすべて購入できたため、次年度以降の旅費等に使用することにした。
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