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2023 Fiscal Year Research-status Report

Do structural fluctuations and structural changes occur in microscopic hydrogen bond networks at cold condition?

Research Project

Project/Area Number 22K05041
Research InstitutionKitasato University

Principal Investigator

石川 春樹  北里大学, 理学部, 教授 (80261551)

Project Period (FY) 2022-04-01 – 2025-03-31
Keywords微視的水素結合 / 構造変化 / 温度効果 / クラスター / レーザー分光 / イオントラップ
Outline of Annual Research Achievements

今年度は,主に以下の2つの観点から微視的水素結合構造の温度依存性や異性化すなわち水素結合構造変化に代表される動的な性質を調べた。
(1) 赤外誘起異性化の観測と異性化経路の探索:極低温イオントラップに捕捉したフェノール-水 1:6 クラスターカチオンを対象として,赤外光照射による異性化とそれに続く冷却過程における異性化を実時間で観測した。その結果,水素結合構造の違いによって異性化速度に大きく差があることが見出された。この結果に対し,理論計算により異性化経路探索を行ったところ,実測の結果を支持する結果が得られた。異性化において,水素結合の切断のみであれば速く進行するが,切断と生成の両方を伴う場合や,プロトン移動を含む場合は遅くなることが明らかとなった。
(2) 重水素置換効果:水素結合に関与する水素原子を重水素原子に置換し,水素結合構造の温度依存性に与える影響を調べた。重水素置換による振動波数の低下により,同じ温度でも状態数が増加し,エントロピーに対する影響が大きく現れると予想していたが,エントロピー的に有利な鎖状構造の異性体の分布が少なくなるという予想と逆の結果が得られた。統計力学計算による解析を行った結果,極低温の領域ではエントロピーに与える効果よりもむしろ零点振動エネルギーに与える効果の方が大きく現れることがわかった。
これらの結果から,微視的水素結合構造に与える温度効果についての今後の議論を深めるための新たな知見を得ることができた。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

赤外励起による水素結合クラスター異性化とそれに続く冷却過程における異性可逆反応の観測に成功し,異性化でも構造変化の種類によって反応速度が大きく異なることを見出した。理論計算による異性化遷移状態探索を行った結果,異性化過程において桁が変わるくらいの反応速度の差があるという実測の結果を支持する結果が得られた。また,重水素置換が水素結合構造の温度依存性に与える影響についての知見がえられた。このように低温領域における水素結合構造の変化について多くのことが明らかとなってきたため,おおむね順調に進展していると考えられる。

Strategy for Future Research Activity

今年度は最終年度に当たるので,成果をまとめることを念頭に置いて,以下の実験を行う。
1つ目は,重水素置換効果が微視的水素結合構造に与える影響の問題で,前年度からの継続課題である。フェノール-水 1:6 クラスターカチオンでは,異性化速度と冷却速度のバランスが重水素置換で変わることが予備的な実験で明らかとなっている。この結果は異性化速度という動的な側面の情報となるため,実験,理論両面から検討を続ける。
2つ目は,当初の目的でもある極低温における異性化の実験である。紫外光照射により異性体の相対分布を能動的に変化させ,その後の異性体分布の変化を追跡する実験を行う。昨年度の赤外励起による異性化は,赤外光によりクラスターの内部エネルギーを上げて,その後の過程を調べたものである。今回の実験は,クラスターの温度は一定のままなので,そもそも極低温で異性化が起こるのか,起こらなければ何度まで温度を上げれば異性化を観測できるかというところから,異性化障壁の高さに関する実験的な情報が得られる可能性がある。
今年度の実験と関係する理論計算の結果とこれまでの成果をまとめて,極低温における微視的水素結合構造の静的,動的な性質を考察する。

Causes of Carryover

令和5年度は,装置のトラブルもなく順調に実験が遂行でき,装置の改良等の費用を抑えることができた。令和6年度には最終年度として,国際会議での発表を計画していたが,円安や航空券代の高騰があり,当初の予定よりも費用がかさむことが予想されるので,令和5年度予定の使用分を令和6年度に回すこととした。

  • Research Products

    (5 results)

All 2023

All Presentation (5 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results,  Invited: 1 results)

  • [Presentation] 水和フェノールカチオンの冷却過程における微視的水素結合構造変化2023

    • Author(s)
      本 将敏・坂上 優・水瀬 賢太・石川 春樹
    • Organizer
      第17回分子科学討論会
  • [Presentation] 水和フェノールカチオンの微視的水素結合構造に対する重水素置換効果2023

    • Author(s)
      坂上 優・本 将敏・水瀬 賢太・石川 春樹
    • Organizer
      第17回分子科学討論会
  • [Presentation] 水和フェノールカチオンの赤外誘起水素結合構造変化2023

    • Author(s)
      本 将敏・坂上 優・水瀬 賢太・石川 春樹
    • Organizer
      第23回分子分光研究会
  • [Presentation] 重水素置換水和フェノールカチオンの微視的水和構造に対する温度効果2023

    • Author(s)
      坂上 優・本 将敏・水瀬 賢太・石川 春樹
    • Organizer
      第23回分子分光研究会
  • [Presentation] Dynamical behavior of hydrated phenol cations in the cold ion trap: Structural changes in cooling processes2023

    • Author(s)
      Haruki ISHIKAWA
    • Organizer
      5th International Symposium of JSPS Core-to-Core Program on “Molecular Recognition Mechanism between Flexible Molecules”
    • Int'l Joint Research / Invited

URL: 

Published: 2024-12-25  

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