2023 Fiscal Year Research-status Report
単分子反応ダイナミクスの精密実空間イメージング分光法の開発
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22K05042
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
星野 翔麻 東京理科大学, 理学部第一部化学科, 講師 (20783616)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | イオンイメージング / 単分子素反応ダイナミクス / 励起状態ダイナミクス / 光化学反応 / 化学反応動力学 / 分子分光学 |
Outline of Annual Research Achievements |
反応中間体や反応生成物の量子状態分布を実験的に調べることは、化学反応ダイナミクスを解明する上で最も重要である。特に反応中間体の構造情報や、反応生成物の空間分布からは、反応のメカニズムに関する直裁的な情報を引き出すことが可能である。本研究課題では、高精度・高効率な量子状態の選択的励起と、イオンイメージング法の高い空間分解能を融合させ、気相分子の単分子反応ダイナミクスの実空間観測を行うことを目的としている。2023年度は昨年度に引き続き、ハロゲン化アシル、特に、ヨウ化アセチル(CH3COI)の紫外光誘起解離ダイナミクスを主対象とした研究を行なった。ヨウ化アセチルは200-300nmの紫外領域にn-π*遷移およびn-σ*遷移に起因する強い吸収を持つ。これら紫外吸収帯を光励起した際に観測されるI原子およびCH3ブラグメントのイオンイメージから、紫外光励起に伴ってCH3COI → CH3CO + Iの一次解離過程と、CH3CO → CH3+ COの二次解離過程が段階的に起こることを明らかにした。この解離過程は光励起によって強い結合が最初に切断されたのちに弱い結合が切断されるという従来の有機反応論(Norrish I型反応)とは異なるメカニズムである。現在、高精度な量子化学計算を行い、解離反応に関与する電子状態の特定や、従来の有機反応論との相違点を理論モデルから説明することを試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に引き続き、ハロゲン化アシルの紫外光誘起解離ダイナミクスを対象とした研究を行なった。その結果、紫外光励起によって強い結合が最初に切断されたのちに弱い結合が切断されるという従来の有機反応論(Norrish I型反応)とは全く異なるメカニズムを明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度にはハロゲン化アシルに加えて大気化学的に重要な化学種であるCriegee中間体の紫外光ダイナミクスを対象とした研究を実施する予定である。また、高精度な量子化学計算を併用して行うことで、反応に関与する電子状態や反応メカニズムの詳細を調査することで、紫外領域における光解離反応過程の全貌を明らかにする。
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Causes of Carryover |
購入を予定していた一部の光学素子等の価格が当初よりも高額になり、別物品での代用等を行なった。差額は2024年度の予算と合わせて使用する。
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