2023 Fiscal Year Research-status Report
有機半導体薄膜におけるキャリア動力学の実時間観測と光スピントロニック制御
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22K05048
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
三浦 智明 新潟大学, 自然科学系, 助教 (80582204)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 有機薄膜太陽電池 / 磁場効果 / 三重項状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
有機半導体薄膜の光スピントロニック制御へ向けた基礎研究を行った。PTB7:PC71BMバルクヘテロ薄膜を用いた有機薄膜太陽電池は、比較的高効率であることが報告されている。PTB7:PC71BM薄膜の光照射によって生じる電荷に関して、吸光度(電荷濃度に比例)と電流(電荷の濃度と流れやすさに比例)の時間変化を同時計測する独自の先端装置を用いた研究を行った。短寿命中間体の電子スピンを磁場によって制御し、その効果を観測したところ、吸光度、光電流ともに10%程度増大したことから、電荷の濃度が磁場により増大することが明らかになった。つまり、スピントロニック制御により、太陽電池の発電効率をさらに高効率化できる可能性が強く示唆された。 PTB7:PC71BM膜の電荷濃度に対する磁場効果は、PTB7単膜に対する磁場効果の報告例とよく一致した。また、磁場効果のは比較的高磁場で飽和し、従来の電子正孔対再結合(電子と正孔がくっついて消滅すること)に対する磁場効果では説明できなかった。ここから新規な磁場効果機構として、PTB7高分子に生じる短寿命励起三重項状態のスピン副準位選択的な失活に対する磁場効果が考えられる。すなわち、有機薄膜太陽電池において従来は無視されてきた三重項状態経由の電荷生成経路の存在を強く示唆している。三重項状態のスピントロニック制御に基づく太陽電池高効率化は全く新しい制御指針であり、磁場効果の詳細な機構解明が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
実際に太陽電池に用いられている材料においてスピントロニック制御に成功したことは、頭書の計画以上の成果であった。
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Strategy for Future Research Activity |
吸光度-電流同時計測を用いた検討を継続し、温度依存性測定等から磁場効果の詳細な機構解明を行う。また、時間分解EPRやフェムト秒過渡吸収などを用いた多角的測定から、スピントロニック制御の鍵となる三重項状態に関して、詳細な検討を行う。これにより、高効率化に向けた指針を得る。
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Causes of Carryover |
購入予定の測定装置に関して再検討を行っているため。
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