2022 Fiscal Year Research-status Report
優れたスマートウインドウ機能を有するニュートラルカラーを示す調光材料の開発
Project/Area Number |
22K05051
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
山崎 鈴子 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (80202240)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | スマートウインドウ / フォトクロミズム / エレクトロクロミズム / ニュートラルカラー |
Outline of Annual Research Achievements |
スマートウインドウにエネルギー貯蔵機能(キャパシタとしての機能)を付与し、LEDやセンサーなどの電力用デバイスとして利用することが期待されており、様々な酸化物半導体電極が報告されている。しかし、いずれも色調は、濃青色と透明間で変化する。青色に着色した窓ガラスの場合には、物体の色認識に影響を及ぼすので、本研究では、グレーや薄黒色などのニュートラルカラーを発色できる材料を開発し、エネルギー貯蔵型スマートウインドウへの応用について検討する。既に、申請者は、モリブデンイオンドープ酸化チタンナノ粒子のフォトクロミズムにおいて、青色を発色せず、グレーを経由して黒くなる新奇な現象を見出している。そこで、本年度は、ゾルの状態でモリブデンイオンドープ酸化チタンナノ粒子の発色機構について速度論的研究を実施した。実験では、様々な条件下において、紫外線照射時間に対する吸収スペクトル変化や、電子スピン共鳴を用いた着色過程におけるモリブデンやチタンの原子価の変化を追跡した。着色時の吸収スペクトルには、535 nmにピークを有し赤外線領域まで延びたブロードな吸収が観察できた。535 nmでの吸光度は、紫外線照射時間とともに増加し、一定値に達する挙動を示した。この時得られる吸光度の最大値は、モリブデンイオンのドープ量に比例した。一方で、光照射直後の吸光度の増加から見積もった発色速度は、ドープ量の増加とともに減少した。速度論的解析結果から、モリブデンイオンのドープにより生じる不純物レベルよりもより深い位置に、発色に寄与するエネルギーレベル(色中心)が形成され、色中心の数はモリブデンのドープ量に依存し、ドープ量が少ない、つまり、孤立して色中心が存在する場合には、速やかに電子をトラップして黒く発色することを明らかにした。以上のような速度論的研究を実施しながら、次年度の研究のための電極作成にも取り組んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に計画した通り、速度論的研究を実施し、フォトクロミズムの発色機構の解明に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
様々なドープ量のモリブデンイオンを含んだ酸化チタンゾルを調製し、酸化インジウムスズガラス上にコーティング後、500度焼成により電極を作製する。これらの電極の電気化学的特性を解明した後、エレクトロクロミズムについて調べる。酸化チタンの結晶格子内に侵入できない過塩素酸テトラブチルアンモニウムや過塩素酸ナトリウムを電解質に用いて、電極の透過率に対する印加電位の影響を調べる。さらに、過塩素酸リチウムを電解質に用いて、リチウムイオンキャンパシタとしての電極性能を評価する。文献では、エネルギー貯蔵型スマートウインドウとして青色発色するニオブイオンドープ酸化チタン電極が報告されているので、申請者の開発するニュートラルカラーを発色するモリブデンイオンドープ酸化チタン電極との比較を行い、後者の優位性を明らかにする。
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Causes of Carryover |
「研究実績の概要」に述べた速度論的研究を実施しながら、次年度の研究のための電極作成にも取り組んだ。その中で、電極作成に必須である現有のスピンコーター、ディップコーター、電気炉の調子が良くないことが判明した。そこで、当初計画していた小型マルチチャンネル分光器の購入を見送った。未使用額は、不調であるこれらの機器の修理もしくは購入に使用し、次年度の計画通りに電極作成が実施できるようにする。
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Research Products
(1 results)