2023 Fiscal Year Research-status Report
中性子その場測定で解き明かすイオン性界面活性剤による流動抵抗低減効果の発現機構
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22K05058
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Research Institution | Comprehensive Research Organization for Science and Society |
Principal Investigator |
岩瀬 裕希 一般財団法人総合科学研究機構, 中性子科学センター, 副主任研究員 (70391266)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 中性子小角散乱 / レオロジー / 界面活性剤 / 紐状ミセル / 流動抵抗低減 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒートポンプなどの循環水にイオン性界面活性剤を添加すると、レオロジー特性の変化により配管内の流動抵抗が大幅に低減することが知られている(流動抵抗低減)。これは、イオン性界面活性剤が溶液中で紐状のミセル構造を形成し、流動中に構造変化や凝集体形成が起こるが要因と考えられているが、そのメカニズムはまだ明らかでない。本研究では、中性子散乱測定により、流動中の紐状ミセルの微視的な構造変化と巨視的な凝集体形成を解析し、圧力損失測定の結果と比較することで流動抵抗の低減性能を支配する紐状ミセルの具体的な構造変化を明らかにすることを目指している。 2023年度には、前年度に設計を進めた中性子散乱測定用の試験装置を整備し、それを使用してカチオン性界面活性剤が水溶液中で形成する紐状ミセルの構造解析を行った。特に、流路内では速度勾配が生じることが知られているため、その影響を調べる必要があった。そのため、流路内の場所依存性を測定し、速度勾配の影響を調べた。その結果、速度の大きい部分では、紐状ミセルの配向度合いが高く、速度の小さい部分では、紐状ミセルがランダムに存在していることが分かった。また、流動速度の増加に伴うミセルの変化も異なる結果を得た。これらの配向度合いやミセルサイズの定量的評価を進めている。 また、界面活性剤だけでなく、棒状高分子を使用した測定も検討した。そのために、中性子小角散乱測定(SANS)、X線小角散乱測定(SAXS)、およびレオロジー測定を用いて評価を行った。 これらの測定で得られた成果の一部は国内の学会で発表された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、中性子実験を行い、マクロなレオロジー特性に影響を与えることが予想される流動速度に依存した紐状ミセルの構造評価を行うことができ、現在解析を進めている。また、2024年度に成果を発表できる目処が立っている。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度に測定した結果についての定量的解析を進める。さらに、温度や試料濃度などの条件を変えての測定や、界面活性剤す溶液以外の試料を用いた比較実験を行い結論を出すことを計画している。これらの成果は国内外の会議で発表し、査読付き論文としても公開する予定である。
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Causes of Carryover |
残額の大部分は、中性子測定装置の高度化と比較測定用の試料の費用に充てられる。これらの詳細な内訳は、2023年度に実施した測定結果を基に決定する予定であった。現在、2024年度前半に執行を予定している。
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Research Products
(5 results)