2022 Fiscal Year Research-status Report
可逆なPd-C結合を利用した自己組織化体の構築と環状および球状共役分子への変換
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22K05075
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
桑原 純平 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (70466655)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | シクロパラフェニレン / 環状共役分子 / 自己組織化 / Pd錯体 / 還元的脱離 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、PdとAgの協働効果を利用することで、Pd-炭素間の結合に可逆性を付与し、それによって自己組織化的に環状のPd錯体を形成可能することを第一の目標としている。さらに、得られた自己組織化体の支持配位子を変換することで反応性を向上し、還元的脱離によって炭素-炭素結合を形成し、シクロパラフェニレンへと変換する方法論の確立を最終目標としている。 2022年度はまず、自己組織化の段階の条件検討を行い、Pdの支持配位子を最適化することで、再現性良く環状のPd四核錯体を得ることを可能にした。この環状Pd四核錯体は溶解性が低いために当初は精製が困難であったが、ソックスレー抽出などの方法を利用することで、精製が可能となった。 次に、還元的脱離によるシクロパラフェニレンへの変換反応を検討した。得られた環状Pd四核錯体の支持配位子を二座のリン配位子へと交換すると、還元的脱離によるC-C結合の形成が促進され、シクロパラフェニレン誘導体が生成することを明らかにした。この方法論の確立によって、全てフッ素で置換されたシクロパラフェニレンが合成可能となった。同様の全フッ素化シクロパラフェニレンは、近年瀬川および伊丹らによってNi錯体を経由して合成されており、これと比較して本手法はサイズ選択的である点に特長がある。また本手法は、フェニレンやチエニレンユニットを含むシクロパラフェニレンの合成にも適応できることを確認した。 得られた各種シクロパラフェニレンの構造は、各種NMR、高分解能マススペクトル、単結晶X線構造解析などによって確認した。溶液状態における吸収および発光特性を評価し、シクロパラフェニレンの歪や各ユニットが光学特性にもたらす影響を評価した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自己組織化の段階と還元的脱離の段階を円滑に進行させるための条件を計画通りに見出すことができており、順調に進展している。本手法をいくつかの誘導体の合成へと展開していく検討も順調に進んでおり、還元的脱離の段階における基質依存性を系統的に調査できている。これらの知見は、今後様々な誘導体を合成していく際の分子設計の指針を与えるものである。これまでに蓄積したこれらの知見を基に検討を進めることで、より複雑な化合物の合成につながらるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに検討してきた手法の詳細を調べると共に、より複雑な三次元構造を有する誘導体の合成へと展開していく。 自組織化の過程の経時変化を追跡することで、結合の組み換えによって最安定構造へと収束していく過程を明らかにする。また、自己組織化体である環状Pd四核錯体の構造解析を行うことで、環員数の選択性等に関する知見を得る。 得られた知見を基に、連結ユニットの構造を検討し、シクロパラフェニレン誘導体に加えて、より複雑な三次元構造を有する化合物の合成へと展開する。
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Research Products
(3 results)