2022 Fiscal Year Research-status Report
Synthesis and Application of pi-Expanded Circulenes By Intramolecular Cyclizations
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22K05077
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
鶴巻 英治 東京工業大学, 理学院, 助教 (00772758)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 大環状化合物 / 多環式芳香族炭化水素 / アントラセン / 環化異性化 / 超分子 / サーキュレン |
Outline of Annual Research Achievements |
新規π共役骨格を持つπ拡張サーキュレン類縁体を標的化合物として、合成および構造と性質に関する研究を行った。我々が過去に報告した、アントラセンがらせん形に縮合した大環状化合物の合成例を参考に、アントラセンを基本ユニットとする大環状化合物を合成し、続く分子内芳香環形成を行うことで、目的化合物の合成を試みた。 今年度はまず、大環状化について、モデル分子を用いて合成検討を行った。1,8-ジアリールアントラセンに対する直接C-Hホウ素化により2,7-ジボリルアントラセン誘導体を効率的に合成し、これとm-ジブロモベンゼンとの鈴木-宮浦カップリングにより大環状化合物を合成した。多数のオリゴマーを含む反応混合物から、3つおよび4つのアントラセンユニットがフェニレン架橋により連結した大環状化合物をそれぞれ単離することができた。それぞれ単結晶X線構造解析に成功し、環状3量体は平面性の高いディスク形構造である一方、環状4量体はサドル形の歪んだ構造を持つことがわかった。また、様々なゲスト分子の内包を検討したところ、いずれの環状化合物も溶液中でフラーレンC60と会合体を形成することをNMRおよび蛍光消光滴定により確認した。 また、関連研究として、2,7-ジブロモアントラセン誘導体をトリプチセンユニットで架橋したケージ形化合物の合成も行い、その構造やフラーレン類の包摂について明らかにした。C60錯体の単結晶を用いる温度可変X線測定および量子化学計算の結果、ケージ形分子に内包されたC60が、固体状態で一軸方向に優勢なジャイロスコープ的挙動を示すことを見出した。 また、大環状化後の分子内芳香環形成についてもモデル反応の検討を行った。本研究で用いるアルキンの分子内環化異性化の反応性検討の一つとして、らせん歪みの非常に大きい新規パイ拡張ヘリセン誘導体を、アントラセン誘導体に対する分子内環化異性化により合成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的とするパイ拡張サーキュレンの合成に向けて、アントラセンを基本ユニットとする大環状化反応や、分子内芳香環形成反応等、鍵となる反応について、その反応性や選択性をモデル分子を用いた合成により確かめることができた。また、モデル合成で得られた大環状化合物やらせん形化合物は、それぞれフラーレン類の内包や、高いキラル光学特性を示し、当初予定していなかった興味深い知見も得られてきた。モデル分子に関する合成および構造や性質に関する研究成果の一部は、先行して研究成果をまとめ、学会や学術誌にて発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、新規パイ拡張サーキュレンの合成、およびその構造と性質を明らかにすることを目標として、合成研究を進める。初年度に得られたモデル分子の合成や性質に関する知見を活かして、アントラセン誘導体に対するカップリング反応、分子内芳香環形成反応により標的化合物の合成を狙う。合成された新規芳香族化合物は、種々の分光測定や単結晶X線構造解析、電気化学測定などにより実験的に明らかにし、分子構造と性質の相関を調べる。また、量子化学計算により、理論的に実験結果を考察し、分子内に空孔を持つナノグラフェンのモデル系として、パイ拡張サーキュレン分子の一般的性質に関する理解を深める。
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Causes of Carryover |
本研究は有機合成研究を主体としており、予算の大部分は有機合成に必要な試薬、器具などの消耗品として計上している。これらの消耗品、特に有機化合物の合成試薬は、近年の世界情勢による価格上昇が大きく、今後もその傾向が続く見込みである。従って、初年度は消耗品や旅費を予定より節約して使用した結果、次年度使用額が生じた。この次年度使用額は、有機合成に必要な消耗品の購入に当てる。
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Research Products
(14 results)