2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K05088
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
中西 和嘉 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主幹研究員 (20401010)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 配座 / 有機構造化学 / 構造制御 / 力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
配座とは有機分子の単結合周りの回転により現れる立体構造である.有機分子が集積した材料中,配座は,分子補足特性(センシング),分光学的特性(吸収・蛍光),電気的特性(導電性)等の材料特性を変化させる重要な構造である.配座が自在に制御できれば一種類の分子で材料特性を調節したり,最適化したりすることができるため,配座の自在制御には有機材料の発展に大きな利点と可能性がある.しかし,配座変化のためのエネルギー障壁は数kcal/mol程度と小さく,安定構造を利用する元来の方法では,様々な配座が材料中に固定されてしまい,自在制御は実現できていない.本研究では,微小なエネルギー制御が可能である力学的エネルギーを利用し,3次元材料中の分子配座の自在制御に関する基盤研究を行うことを目的とする.具体的には,配座制御を行う分子を3次元ポリマー中に分散させ,引張応力を印加する.このとき,力学的エネルギーによって誘起されるポリマーの主鎖配向を利用して,目的分子の配向・配座制御を行う.力学的エネルギーを段階的に加えながら分光スペクトルをモニターして分子の配座を追跡することにより,配座制御の実現に必要な条件(①分子側鎖,②分子配向,③ポリマーの機械的特性)を明らかにしていく. 初年度の計画は,配座を検出できる分子をポリマーに埋め込み,この混合材料に対して力学刺激を加え,分子配座変化に伴う分光スペクトル変化が検出できるか,検証することであった.計画通り,側鎖の異なる複数の分子を合成し,ポリマー材料と反応させた.この中のいくつかの分子において,力学刺激に対してスペクトルが変化することを確認できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の計画は,配座を検出できる分子をポリマーに埋め込み,この混合材料に対して力学刺激を加え,配座変化に伴うスペクトル変化が検出できるか,検証することであった.おおむね計画通りに実験が進めれ,結果を得ることができている.母骨格に対して,直鎖や分岐鎖を有する側鎖を導入した分子を合成した.これらの分子をポリマーに導入し,形成することで,混合材料を調整した.この混合材料を引き伸ばしながらスペクトル測定を行った.その結果,側鎖の構造に応じたスペクトル変化が得られた.配座を変化させた構造に対し,TDDFTを用いてスペクトルをシミュレーションし,配座変化によって,スペクトルが変化することを確認した.よって,実験で得られたスペクトル変化は配座変化に起因するものであると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は,3次元ポリマー中で誘起される主鎖配向により分子配座を制御しようとするものである.分子配座の制御のためには次の3つの項目が重要であると考えられる:①分子側鎖,②分子配向 ③ポリマーの機械的特性.これらの影響による配座変化をスペクトルの測定と理論計算により理解し,配座の自在制御を目指す.本年度は,ポリマーと分子の分子間相互作用を制御することで,分子配座を制御するための研究計画であり,順調に研究が進んでいる.次年度は,分子配向と力の向きの関係についても理解する.さらに,計測,計算により求めた配座変化と,分子に与えた力の関係を明らかにするために,引張試験器を用い,ポリマーの引き延ばしによりかかる力を計測して算出する.ポリマーの架橋度によって機械的な強度や,許容される引き延ばし率が異なるため硬さといった機械的性質が異なり,かけられる力が異なる.ポリマーの架橋度を調節することによって分子に与える力学エネルギーを調整する.
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Causes of Carryover |
コロナの影響で出張を制限したため,旅費を利用できなかった.次年度に学会参加を計画する.また,比較的分子量の大きい分子の分離精製に使用するGPC用カラムを計上していたが,初年度は小分子で成果が得られたため,比較的分子量の大きい分子の検討を行う必要がなく,予定していたGPC用カラムの購入を行わなかった.次年度に分子量を最適化したうえで購入を計画する.
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Research Products
(4 results)