2022 Fiscal Year Research-status Report
カリウムホモエノラート等価体の新規調製法の開発および有機合成への利用
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22K05091
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
崔 允寛 岐阜大学, 工学部, 助教 (60783454)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | カリウムジアニオン / ホモエノラート / エノラート / アリルアルコール / ケトン / シリルエノールエーテル |
Outline of Annual Research Achievements |
金属ホモエノラートはカルボニル化合物のβ位に選択的に求電子剤を導入することができるため重要な求核剤である。しかしながら、金属ホモエノラートの調製は一般に困難である。これまでシロキシシクロプロパンやシクロプロパノールの開環およびβ-ハロエステルの低原子価金属への酸化的付加による金属ホモエノラートの調製法が開発されているが、前駆体となる化合物自体が合成しづらく、置換様式も限定されるという大きな欠点がある。さらにこのような手法により調製されたチタンや銅、亜鉛ホモエノラートは求核性が低いため、極めて反応性の高い求電子剤しか用いることができなかった。よって反応性の高い金属ホモエノラートを合成容易な原料から簡便に調製することは、有機合成上重要な研究課題の1つである。 申請者はこれまで独自に塩基による不飽和アルコールの新規変換反応の開発を行ってきた。その過程で、アリルアルコールに対して強塩基を二当量作用させると、水酸基のプロトンおよび酸素根元の水素原子を引く抜くことで、金属ジアニオンが生じると予想した。この金属ジアニオンは求核性の高い金属ホモエノラート等価体なので、様々な求電子剤と反応することで、従来法では合成が困難なβ位に多様な官能基を持つカルボニル化合物およびその誘導体が合成できる。またβ位で求電子剤と反応させた後、残存する金属ホモエノラートに対して異なる求電子剤を連続して作用させることで、αおよびβ位が官能基化されたケトンが得られる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
合成容易なアリルアルコールに強塩基である(トリメチルシリル)メチルカリウムを作用させると、対応するカリウムジアニオンが生じることを明らかにした。このカリウムジアニオンはカリウムホモエノラート等価体として作用するため、様々な求電子剤とβ位で反応する。さらにβ位で求電子剤と反応させた後、シリル化剤を作用させることで、3位が官能基化されたシリルエノールエーテルが得られることも見出している。これらの研究成果を既に論文として複数発表していることから、当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は引き続き、アリルアルコールから調製したカリウムジアニオンと様々な求電子剤との反応を試みる。特にカリウムから他の金属への金属交換反応、遷移金属触媒を用いるクロスカップリング反応、酸化的カップリングなどを検討する。さらにアリロキシシランと(トリメチルシリル)メチルカリウムから生じるシロキシアリルカリウムを用いることで、レトロブルック転位を利用した新規変換反応にも挑戦する。
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Research Products
(12 results)