2022 Fiscal Year Research-status Report
Catalytic synthesis of phenalenones using the double hydrogen-bond donating ability of iminium intermediates
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22K05102
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Research Institution | Yokohama College of Pharmacy |
Principal Investigator |
塚本 裕一 横浜薬科大学, 薬学部, 教授 (70323037)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 9-ヒドロキシフェナレノン / 1,8-ジヒドロキシナフタレン / α,β-不飽和アルデヒド / イミニウム中間体 / 二重水素結合供与 |
Outline of Annual Research Achievements |
天然物の部分構造や材料科学分野で注目されている9-ヒドロキシフェナレノン(9-Hopo)の新規合成法として、アミン触媒を用いた1,8-ジヒドロキシナフタレン(DHN)とα,β-不飽和アルデヒドのFriedel-Crafts型脱水縮合反応を開発している。本法は、温和な反応条件下、市販のDHNをイナールやアレナールなどのα,β-不飽和アルデヒドに由来する置換基をもつ9-Hopoへと一工程で変換できる。第二級アミン触媒の設計・合成により、DHNの反応点を制御し、その重合を抑制することを計画した。 咋年度は、一昨年度に最適な触媒として見出された2-(2-ピペリジニル)-1H-インドールの合成法を開発し、その類縁体の合成と触媒活性の評価も行った。前者については、ラセミ体のみならず、不斉触媒反応への応用を視野に入れ、光学活性体の合成法も開発した。後者については、インドールやピペリジンを他の含窒素複素環に置換したもの、インドールに置換基を導入したものなどを合成したが、2-(2-ピペリジニル)-1H-インドールを上回る結果は得られなかった。 また、3-フェニル-2-プロピナールを基質として用いた反応条件の検討により、イナールの溶液を小過剰のDHNとアミン触媒の混合溶液に室温で加え、最終濃度を0.02 Mとするのが最適であることがわかった。溶媒としては、トルエンやジエチルエーテルなどの非極性溶媒が良い結果を与えた。イナール上の置換基を電子密度の異なるアリール基やアルキル基に変えて同条件で反応を行ったところ、いずれの場合もフェニル置換体よりも収率が低下した。このことから、基質によって最適な触媒が異なる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2-リチオインドールを用いた2-(2-ピペリジニル)-1H-インドールの合成法を開発した。ラセミ体については、1)5-アジド吉草酸Weinrebアミドに対する付加と分子内還元的アミノ化、2)5-アジド吉草酸アルデヒドに対する付加とアミノアルコールの脱水型環化により合成した。ピペリジンを系中で酸化して得られる2,3,4,5-テトラヒドロピリジンに対する付加も検討したが、スケールアップに伴い収率が低下した。光学活性体については、5-ブロモ吉草酸アルデヒドとtert-ブタンスルフィンアミドとの脱水縮合により得られた光学活性なスルフィニルイミンに対するジアステレオ選択的付加と分子内SN2反応により合成した。 また、インドールをイミダゾールやピラゾール、トリアゾールに置換したもの、ピペリジンをテトラヒドロイソキノリンに置換したもの、1,2,3,4-テトラヒドロカルバゾール1位とピペリジン2位をスピロ環として連結したもの、インドール3位にブロモ基やメチル基、フェニル基を導入したものを合成し、触媒活性を評価したが、2-(2-ピペリジニル)-1H-インドールの性能を上回るものはなかった。なお、インドール1位をメチル基で置換した触媒は、収率および選択性の大幅な低下を示し、触媒活性におけるN-H結合の重要性が再確認できた。 3-フェニル-2-プロピナールを用いた反応条件の検討により、イナールの溶液をDHN(1.4当量)と触媒(13 mol%)の混合溶液に室温で加え、最終濃度を0.02 Mとするのが最適であることがわかった。溶媒としては、トルエンやジエチルエーテルなどの非極性溶媒が良い結果を与えた。イナール置換基を電子密度の異なるアリール基やアルキル基に変えて同条件で反応を行ったところ、いずれの場合もフェニル置換体よりも収率が低下した。このことから、基質によって最適な触媒が異なる可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
インドール3位に置換基をもつ触媒は、これまで3位置換インドールから2位にピペリジニル基を導入し合成していたが、置換基のないものに比べ収率が低く、効率的に類縁体を合成することができなかった。そこで、2-(2-ピペリジニル)-1H-インドールの保護体を用い、求電子置換反応を含めた3位への置換基導入方法について検討する。ピペリジンをピロリジンやアゼパンに置換した触媒についても合成する。また、シス-デカヒドロキノリンの7, 8位にインドールの2, 3位を縮環した新たな触媒の合成も検討する。 最適化された触媒を用い、イナール上の置換基の適用範囲について再度検討を行い、4位または6位に置換基をもつ9-Hopoを合成する。イナールの代わりに2位に置換基をもつ2,3-アルカジエナールを用いることで、5, 6位に2つの置換基をもつ9-Hopoも合成する。さらに、イナール上の置換基にもう一つ求電子部位を導入し、DHNのMichael付加により生じたエナミン中間体を捕捉することで、縮環した9-Hopoも合成する。さらに、本手法をspiropreussione Bの合成にも適用する。 また、最適化された触媒の作用機序、とりわけイミニウム中間体において非局在化した正電荷をもつことが期待されるα-水素原子が水素結合ドナーとして働く可能性について、計算化学的手法により検証する。 キラルアミン触媒の合成法についてはすでに確立したため、各種不斉反応に応用し、本触媒の有用性を拡張する。求電子剤をエナールに代えることで、DHNを含む各種フェノール類の不斉Friedel-Crafts反応を検討する。また、触媒のアミン部位と芳香族複素環N-H結合を、それぞれカルボニル求核剤および求電子剤の活性化に利用し、不斉アルドール反応などのエナミン型反応に適用する。
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Causes of Carryover |
一昨年度で終了予定であった研究課題について研究期間を延長したこともあり、本研究課題に対するエフォートが減り、昨年度予定されていた物品費を全額使用することができなかった。今年度は、昨年度行う予定であった反応基質の調製に物品費を使用すると同時に、研究成果発表のための学会参加費、論文投稿費などにも使用する。
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Research Products
(3 results)