2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K05110
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山本 芳彦 名古屋大学, 創薬科学研究科, 教授 (60283412)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 含窒素化合物 / 含窒素複素環化合物 / 環化付加 / 遷移金属触媒 / 炭素-水素結合活性化 / 不斉非対称化 |
Outline of Annual Research Achievements |
2位あるいは6位にトリフルオロメチル基が置換したピリジン-3-オールの窒素原子をメチル化して生じるピリジニウム塩を、トリエチルアミンの存在下にマレイミドやビニルスルホンと反応させることで(5+2)環化付加を進行させ、橋頭位にトリフルオロメチル基をもつトロピノン誘導体を合成することに成功した。その際、エンド・エキソ選択性やスルホニル基の位置選択性がトリフルオロメチル基の置換位置によって制御されることを見出し、理論計算によって選択性発現機構を解析した。一方、5位にトリフルオロメチル基をもつピリジン-3-オールを用いて、2,3-ジメチルブタジエンとの(5+4)環化付加反応を検討したところ、シリカゲルカラムによる分離のさいにトリフルオロメチル基がカルボキシル基へと変換されることが判明した。そこで、粗生成物をシリカゲルで処理したのち、カルボキシル基をメチル化することで既知のエステルとして生成物を単離・同定した。 ピリジンオキサゾリンをキラル配位子とするイリジウム触媒分子内C-Hシリル化反応を、トリフルオロメチル基の置換したベンズヒドロールシリルエーテルの不斉非対称化に応用することにより、高立体選択的に生成物を得ることに成功した。その際、通常必要とされる水素受容体が不要であり、直接水素ガスが気相に放出されることを確認した。理論計算により反応機構を解析し、C-H活性化段階がエナンチオ選択的に進行する原理を解明するとともに、分子状水素が活性化エネルギーゼロで進行することを突き止めた。得られるベンゾオキサシロールを光学純度を維持したまま多様な生成物へと導くことにも成功し、トリフルオロメチル基の置換したsp3炭素におけるキラリティー制御の新手法を確立することができた。さらに、本手法を非対称なトリフルオロメチル置換ベンズヒドロールの速度論的光学分割にも展開し、良好なエナンチオ選択性の発現を観測した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
トリフルオロメチル置換オキシドピリジニウムの(5+2)環化付加反応を駆使して、橋頭位にトリフルオロメチル基をもつトロピノン誘導体の合成に世界で初めて成功した。加えて、同反応においてトリフルオロメチル基が立体選択性や置換位置選択性に及ぼす影響を初めて明らかにしたことは、含フッ素化合物合成の化学に重要な示唆を与える結果であり、Chemistry Asian Journal誌においてHot Articleに選定された。 また、トリフルオロメチル置換ベンズヒドロールシリルエーテルの不斉非対称化が水素受容体を必要とせず高収率・高エナンチオ選択的に進行した結果は、既存の触媒系では3級ベンズヒドロールの不斉非対称化が低収率・低立体選択性的であることと対照的であり、トリフルオロメチル基の得意な立体電子効果が反応の制御にポジティブに働いた希な例として有機フッ素化学のみならず、遷移金属触媒科学にも有用な学術的知見を提供する。その結果として、アメリカ化学会のJACS Au誌に論文が掲載された。
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Strategy for Future Research Activity |
トリフルオロメチル置換オキシドピリジニウムの(5+2)環化付加反応研究により、トリフルオロメチル基の得意な効果が観測されたものの、本手法に利用できるトリフルオロメチル置換ピリジン-3-オールが限定されるため、その新たな合成法を開発する予定である。 また、トリフルオロメチル置換ベンズヒドロールシリルエーテルの不斉非対称化は、ベンゼンを複素環に変えた誘導体には適用できないことがわかった。そこで現在、チオフェン環とベンゼン環をもつベンズヒドロール誘導体の反応を検討しており、ベンゼン環ではなくチオフェン環上で炭素ー水素結合活性化が進行することを見出している。今後は、フランやインドールを含め、多様な複素環誘導体を検討し、本手法の有用性を高める計画である。
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Causes of Carryover |
研究は計画通り進み顕著な成果が得られたものの、有機合成試薬等の消耗品費が予定より抑えられたため、次年度使用額が生じた。次年度には、ガラス器具や試薬等の消耗品や小型実験器具等を補充し、最終年度の総仕上げを実施する。
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Research Products
(7 results)