2022 Fiscal Year Research-status Report
銀触媒による環化反応を基軸とした抗がん活性マクロライド類の合成と応用研究
Project/Area Number |
22K05120
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Research Institution | Tohoku Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
渡邉 一弘 東北医科薬科大学, 薬学部, 准教授 (10382673)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤村 務 東北医科薬科大学, 薬学部, 教授 (70245778)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 天然物合成 / マクロラクトン / 抗がん活性 / 類縁体合成 / 環化反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
新しいがん治療薬の開発には、膨大な時間と費用がかかるため自然界にある天然物を設計図として活用することが最も効率的と考えられる。また、現在のがん治療では薬物療法が主流であり、多種多様ながんに対抗する新規治療薬の開発は重要な研究課題である。本研究では、cis-テトラヒドロピラン (THP) 環を含む強力な抗がん活性を有する海洋性マクロライド天然物を選定し、独自の銀(I) 触媒を用いた立体特異的な環化反応を鍵工程として全合成研究を行う。さらに、既存の反応では合成が困難である trans-THP 環やピペリジン環の構築に応用する。また、得られた類縁体群に対して、共同研究として抗がん活性試験を行うことにより、がん薬物治療に展開するための研究基盤を確立すると共に、天然物を驚愕する新しい治療薬の創製に貢献することを目的として研究を行った。 令和4年度は、1) 銀触媒環化を用いたTHP環の構築、および 2) 銀イオンを用いたピペリジン環の新規構築を主軸として研究を行った。まず、1) の 研究成果として、環化前駆体であるラセミ体のベンゾエート部を有するホモプロパルギルアルコールを合成し、銀触媒による環化反応を検討したところ、望む THP 環の構築に成功した。一方で、環化前駆体を合成する段階での収率が低く、改善の余地があることが判明した。2)では、3,4-ジメトキシアルデヒドから6工程で、環化前駆体であるBoc 基で保護したホモプロパルギルアミンを合成し、種々の銀イオンを用いて環化反応を検討したところ、中程度の収率ながら望む cis/trans-ピペリジン環を合成することに成功した。さらに、本合成法を応用して天然物である(-)-ラスビン II の全合成を達成した。また、文献記載の方法を用いることでラスビンIIから (+)-サブコシンIIへの誘導が報告されていることから、形式合成も同時に達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
銀(I) 触媒を用いた立体選択的な環化反応を鍵工程とした強力な抗がん活性を有する海洋性マクロライド天然物群の合成に関しては、メインのTHP環の構築は達成しており概ね順調に進展している。一方で、原料合成において一部沸点が低い中間体が存在しており改善の余地がある。現在、その問題を解決すべく芳香環を導入し、分子量を大きくした中間体を経由する新しい合成経路での検討を行っている。今後は、光学活性な環化前駆体を合成して天然物の合成に応用する予定である。 銀イオンによるピペリジン環構築反応に関しては、令和4年度で環化前駆体まで構築する合成計画を立案し行った。一方で、この原料合成が予想以上に順調に進んだことから、さらに環化反応を検討したところ収率等の改善が必要ではあるもののピペリジン環の新規構築法の開発に成功した。さらに、得られた環化体から誘導することにより(-)-ラスビン II の全合成、および(+)-サブコシンIIの形式合成も達成し、当初の計画以上に進展する結果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
銀触媒環化を用いた THP 環の構築に関する研究では、すでにラセミ体の合成を達成しているため、1) 合成経路を見直し収率を改善、2) その合成経路を用いた光学活性な基質への応用、および、3) 海洋性マクロライド天然物群の合成への応用へと順次、計画的かつ効率的に行う予定である。また、ピペリジン環構築反応においては、種々の反応条件検討を行い収率の向上を目指す。さらに、現在の環化反応では、銀イオンを化学量論量以上用いて行っているが、反応の効率化を考え銀イオンの触媒化への検討を行う予定である。一方、銀のみならず他の金属を用いた触媒化反応の検討も同時に行い、新しい金属種の発見も行いたいと考えている。なお、これらの研究は、大学院生1名、薬学科5、6年生を3名程度の補助により研究を促進する予定である。
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Causes of Carryover |
銀イオンを用いた新規ピペリジン環構築法の検討は、原料合成およびメイン反応が想定以上の進行度で順調に推移した。この理由により、予定していた反応で使用する試薬および溶媒などを購入しなかったため、次年度への繰越が発生した。次年度は、本予算を用いて更なる研究の促進を行う予定である。
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