2023 Fiscal Year Research-status Report
銀触媒による環化反応を基軸とした抗がん活性マクロライド類の合成と応用研究
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22K05120
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Research Institution | Tohoku Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
渡邉 一弘 東北医科薬科大学, 薬学部, 准教授 (10382673)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤村 務 東北医科薬科大学, 薬学部, 教授 (70245778)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 天然物合成 / マクロラクトン / 抗がん活性 / 類縁体合成 / 環化反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
最近では、新しいがん治療法として免疫療法が大きく取り上げられているが、がん治療の基本的な柱は、「化学療法」「手術療法」「放射線療法」が主流である。中でも、「化学療法」は、抗がん剤を使用したがん細胞の縮小や再発防止による投与など幅広く使用されており、常に新しい抗がん活性を有する化合物の開発は、非常に重要な課題の一つである。本研究では、cis-テトラヒドロピラン (THP) 環を含む強力な抗がん活性を有する海洋性マクロライド天然物を選定し、独自の銀(I) 触媒を用いた立体特異的な環化反応を鍵工程として全合成研究へのアプローチを行っている。 昨年度は、化学量論量の銀イオンを用いて、ラセミ体のプロパルギルベンゾエートに対して反応を行った。その結果、望むテトラヒドロピラン (THP) およびピペリジン環の構築に成功した。本年度は、① ピペリジン環構築に関する銀イオン触媒化の検討、② 環化前駆体の合成法の再検討、③ 銀触媒によるTHP 環構築を鍵工程とした天然物の合成への応用、を主軸に研究を行った。① に関しては、添加剤の検討や銀イオンのカウンターアニオン種を変えて種々検討を行ったが、触媒化には至っていない。② 「環化前駆体の合成法の再検討」に関しては、反応条件を見直すことにより、全体の収率の向上がみられ昨年度よりは環化前駆体の合成が容易になった。さらに、③ の「銀触媒によるTHP 環構築を鍵工程とした天然物の合成への応用」は、NCI-60 系ヒトがん細胞パネルスクリーニングにおいて強力な増殖阻害活性を示し、急性骨髄性白血病や消化管質腫瘍の治療薬のシードとして期待されているエニグマゾールAの全合成研究に応用した。その結果、エニグマゾールA のTHP 環を含む下部構造部分の合成を行い、重要中間体まであと数工程のところまで進行している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
THP 環構築においては、銀イオンの触媒化に成功している。一方、①「ピペリジン環構築に関する銀イオン触媒化」に関しては、銀イオンとして、テトラフルオロホウ酸銀(AgBF4)を中心として、過塩素酸銀(AgClO4)やヘキサフルオロアンチモン(V) 銀(AgSbF6)などを検討しているが、未だ触媒化には成功していない。今後は、添加剤との組み合わせを含め、検討していきたいと考えている。②「環化前駆体の合成法の再検討」においては、より反応性の高い基質に変え、合成ルートおよび反応条件の見直しを行い、今まで低収率だった反応が改善し、比較的再現性および収率良く望む環化前駆体が合成できるようになったため、順調に進展していると考えている。③ 「銀触媒によるTHP 環構築を鍵工程とした天然物の合成への応用」は、目的物として抗がん活性を有するエニグマゾールAを設定した。これは、数多くの全合成例が報告されており、申請者が開発した銀触媒によるTHP環構築法を応用することにより、形式全合成が素早く達成できると考え行った。現在は、順調に合成できており、来年度には形式全合成を達成したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
ピペリジン環の合成に関しては、酸素原子に比較して窒素原子の求核性が高いことから、銀イオンと窒素原子が酸素原子より強固に配位することにより、触媒化が困難ではないかと考えている。進捗状況でも述べたように、添加剤の検討と並行して、反応溶媒と反応温度の検討も行いたいと考えている。さらに、5つの反応が同時に検討できる「合成装置」を用いて、網羅的に条件検討する予定である。その際、大学学部生1名および大学院生1名の補助により研究を促進していきたいと考えている。③ 「銀触媒によるTHP 環構築を鍵工程とした天然物の合成への応用」では、エニグマゾールAの形式全合成を目指すと共に、他の天然物へ発散的な合成が可能な共通合成中間体を設定することにより、様々なマクロ環天然物の効率的な合成をを進めていく考えである。
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Causes of Carryover |
今年度は、本研究課題の分担者である藤村 務教授の生物活性試験に関する試薬を購入しなかったため、相当分の繰越金が発生した。次年度は、生物活性試験用の試薬を予定通り購入し、各種がん細胞に対する毒性試験を行う予定である。
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[Presentation] TEMPO置換モノマーを用いた電気化学的重合反応による修飾電極の作製とその電気化学分析への応用2023
Author(s)
柏木 良友, 大野 瑞季, 大川原 直希, 大原 萌, 渡邉 一弘, 今橋 良太, 吉田 健太郎, 小野 哲也, 佐藤 勝彦
Organizer
日本分析化学会第72年会, 熊本, 演題番号2P-037 2023年9月14日
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[Presentation] Doxorubicin 耐性細胞に対するセサミン代謝物 (7α,7α,8α,8α)-3,4-methylenedioxy-7,9:7,9-diepoxylignane-3,4-diol (SC1) の効果2023
Author(s)
蓬田 伸, 渡邉 一弘, 染谷 明正, 數野 彩子, 上野 隆, 三浦 芳樹, 菅野 秀一, 大河原 雄一, 藤村 務
Organizer
第96回 日本生化学会大会, 福岡, 演題番号 1P-304 2023年10月31日