2022 Fiscal Year Research-status Report
Development of CO2 conversion reaction using electrons from H2
Project/Area Number |
22K05130
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
谷田部 剛史 九州大学, 工学研究院, 助教 (00748387)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 水素の活性化 / 二酸化炭素 / 酸素 / 過酸化水素 / 電子貯蔵触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題において、水素から電子を取り出す分子触媒(電子貯蔵触媒)が、二酸化炭素を還元する反応性を有することは必要不可欠である。したがって、今年度は高活性な電子貯蔵触媒の開発に取り組んだ。具体的には、これまでの電子貯蔵触媒の分子設計指針とは反対に、中心金属の電子密度が高くなる分子触媒の合成を行なった。新規に合成したロジウム触媒は、水素からの電子抽出を行なった後、二酸化炭素との反応は進行しなかったものの、微量の酸素とも迅速に反応した。この電子貯蔵触媒と酸素との反応生成物として、過酸化水素が得られたため、過酸化水素合成触媒として利用したところ、非常に高い触媒回転数で過酸化水素を合成できることがわかった。さらに、一つのフラスコで、安全な水素と酸素の混合ガスから高効率に過酸化水素を合成できる初めて触媒であることが明らかとなった。この成果を、Journal of the American Chemical Societyに報告し、プレスリリースを行なった。この分子触媒の他にも、ニッケルやパラジウムの電子貯蔵触媒の合成にも成功しており、今後二酸化炭素との反応を検討する。また、イリジウムを中心金属とする電子貯蔵触媒を利用することで、水素の電子で還元的に活性化した二酸化炭素活性種の直接観測にも成功している。この二酸化炭素活性種は、アルコールやアミンと反応し、対応するエステル錯体およびアミド錯体を与えることがわかった。これらの研究を学術論文として報告する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、電子貯蔵触媒の開発を行い、ロジウム、ニッケル、パラジウム、イリジウムを中心金属にもつ電子貯蔵触媒開発に成功している。水素の電子を中心金属に貯蔵する触媒の合成において、それぞれの金属中心に対する適切な有機配位子の組み合わせを明らかにすることができており、本研究課題の基礎的な知見を十分に得られた。これまでは、電子貯蔵触媒の中心金属には、主にロジウムを用いていたが、イリジウム、ニッケル、パラジウムの電子貯蔵触媒を合成できたことで、今後、様々な電子貯蔵触媒を用いた二酸化炭素の還元的変換反応が期待できる。イリジウム触媒に関しては、二酸化炭素との反応の進行を確認できており、水素の電子を利用した二酸化炭素の還元的活性化にも成功している。以上の理由で、本研究課題は、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
すでにイリジウム触媒では、水素の電子を利用した二酸化炭素の還元的活性化に成功しているため、今後はさまざまな基質との反応により二酸化炭素の還元的変換反応を検討していく予定である。反応の進行が確認できなかった場合は、有機配位子の化学修飾や光照射による反応の促進を試みる。ニッケルおよびパラジウム電子貯蔵触媒においては、まず二酸化炭素との反応を行い、生成物および反応中間体の観測を行う。
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Causes of Carryover |
本年度の研究に必要な物品等は、1,782,899円で購入することができた。 繰り越した10,101円を含めた次年度の予算を使用して、高額な13Cー同位体ガスやさまざまな反応基質を購入する予定である。
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