2022 Fiscal Year Research-status Report
複合機能希土類触媒を用いた精密連鎖制御による機能性高分子材料の創製
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22K05135
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
西浦 正芳 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 専任研究員 (30332258)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 希土類 / C-H結合活性化 / オレフィン重合 / 自己修復 |
Outline of Annual Research Achievements |
損傷から自己修復できる材料の開発は、学術的にも実用的にも極めて重要である。従来の自己修復性材料には、精密に設計された2種類以上のモノマーの共重合や多段階で合成されたものが知られている。しかし、入手しやすい1種類のモノマーからの自己修復性ポリマーの合成は実現されておらず、合成プロセスの観点から課題がある。 本年度は、新たな自己修復性ポリマーの開発に取り組んだ。ミクロ構造の違いによって異なる物性を示すポリイソプレンに着目し、希土類金属触媒を用いてさまざまなミクロ構造を持つポリイソプレンを合成し、自己修復性について検討した。C5Me4SiMe3配位子を有するスカンジウム(Sc)触媒を用いて、ポリイソプレンの3,4-ユニットとシス-1,4ユニットの比を約7:3に精密に制御することにより、損傷から自己修復性を示す機能性ポリマーを創製した。得られた新しいポリマーは、伸び率約20倍、破断強度約2MPaと優れたエラストマー物性を示した。また、外部から一切の刺激やエネルギーを加えなくても、大気中だけではなく、水、酸やアルカリ性水溶液中でも自己修復性を示した。さらに、ポリイソプレンの二重結合部分を水素添加したポリマーは、水素添加していないポリイソプレンと比較して、同等かそれ以上の自己修復性を発現した。このことは、比較的単純なポリオレフィンでも、ミクロ構造を適切に制御すれば、自己修復性を発現させることができることを示しており、材料設計の観点から非常に重要な成果と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回、スカンジウム触媒を用いてポリイソプレンのミクロ構造を制御することにより、様々な環境下で自己修復性能を示す新しい機能性ポリマーの創製に成功しており、今後の自己修復性材料の設計・開発にとって重要な指針を与えるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
キラルなスカンジウム触媒を用いて2-アリール置換キノリン化合物とアルキン類を反応させることにより、オルト-C-H結合の活性化による分子間C≡C三重結合への付加に続いて分子内C=N結合への脱芳香族的求核付加が進行し、光学活性なスピロ型多環式化合物の合成を初めて達成した。この反応を基本として、一つの分子にキノリン構造とアリールアルキンユニットを有するモノマーを設計し、連続的にスピロ環化反応を進行させ、新規高分子材料を開発する。
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Research Products
(13 results)