2022 Fiscal Year Research-status Report
反応速度の転換を可能にする柔軟性MOFナノ空間反応場の創製と機能開拓
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22K05141
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
日下 心平 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (80749995)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | metal-organic framework / 化学発光 / 反応化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
ナノメートルサイズの空間の中での反応は、空間と反応基質の立体相互作用により特異な生成物を与えるなど、化学反応の可能性を大きく拡げられると期待されている。とりわけmetal-organic framework(MOF)は、その構造設計性により新たな反応場としての応用が期待されている。しかしながら、これまでのナノ空間反応場における反応開発は、生成物に着目した研究が大半で、反応速度に着目した研究はほとんど行われてこなかった。本研究では、柔軟性MOFナノ空間を用いた、微小な反応条件の変化に応答して反応速度が劇的に増加する「反応速度転換機能」を有する反応場の実現を目指す。本研究の目的は、MOFの有するナノ空間構造変化と吸着の共同性に基づく「ゲート型吸着機能」および、ナノ空間と反応の立体相互作用に基づく「反応立体制御機能」を組み合わせ、反応がわずかな反応条件の変化に応答して急激に進行する「反応速度転換機能」を有する反応場を実現することである。本研究では、具体的な反応速度転換機能の実証に、熱分解反応に伴う化学発光を用いる。通常の熱分解反応は各々の分子が独立して進行するが、反応速度転換機能を持つナノ空間反応場では、多くの分子の熱分解反応が同時に進行し、均一溶液中に比べて強い化学発光が観測されることが期待される。2022年度の研究において、まず一重項酸素の受容/放出部位であるアントラセン部位および発光色素部位となるポルフィリン亜鉛錯体を同時に有する新規MOFを合成し、光照射による一重項酸素の放出と、加熱による一重項酸素の放出が可逆に進行することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、まず一重項酸素の受容/放出部位および発光色素部位を同時に有するMOFの合成を計画しており、続いて加熱に伴う化学発光および構造解析を同時に行える装置の開発、MOFの柔軟性の制御による反応進行の共同性の評価を行うことを計画している。2022年度の研究において、最初の目標であるMOFの開発に成功しており、おおむね当初計画通り研究が進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
加熱したサンプルの蛍光スペクトルをIn-situで測定するための装置を2022年度に導入した。予定通り、2022年度に得られたMOFを加熱し、熱分解に伴う化学発光を導入した装置を用いてin-situで観測し、その時間変化を追跡することで反応キネティックスを明らかにする。また、in-situのラマンスペクトルを測定することで、一重項酸素二量体を観測する。
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