2022 Fiscal Year Research-status Report
抽出剤含有プロトン性イオン液体の複合的相互作用によるテクネチウムの高効率抽出分離
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22K05163
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
岡村 浩之 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究副主幹 (30709259)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | イオン液体 / 溶媒抽出 / 抽出分離 / 抽出剤 / 配位子 / テクネチウム / レニウム / アニオン |
Outline of Annual Research Achievements |
テクネチウム-99は半減期21万年の長寿命放射性核種であり,環境中に放出されると長期的な影響を及ぼすため,効率的な除去技術の開発が求められているが,環境水などの中性pH付近の水溶液からテクネチウムを選択的に分離可能な手法はほとんどない。テクネチウムの分離法としては溶媒抽出法が有望であるが,中性抽出剤を用いた一般的な有機溶媒系では,中性水溶液からの抽出効率は著しく低い。それに対して,イオン液体を媒体とした場合は,液状イオン交換体としても働くことから,有機溶媒系では実現できないアニオン種の抽出系を構築できる。さらに,プロトン性イオン液体を用いた場合は,複合的な相互作用が働くため,優れた抽出分離特性を示すことが期待でき,テクネチウムの効率的な除去が達成できると期待される。本研究は,テクネチウムに対して高い抽出能を示す抽出剤を含有する新規プロトン性イオン液体を合成し,抽出剤かつ抽出媒体として用いることで,高効率かつ選択的なイオン液体抽出系を構築し,環境水中テクネチウムの効率的な除去システムを開発することを目的としている。本年度は,新規プロトン性イオン液体を合成し,過テクネチウム酸イオン(TcO4-)のアナログとなる過レニウム酸イオン(ReO4-)のイオン液体への抽出について研究した。 具体的には,TcO4-に対して高い抽出能を有する中性抽出剤のプロトン付加体と塩化物イオンから構成される新規プロトン性イオン液体を合成し,ReO4-を含み酸性から塩基性までpHを変化させた水相とプロトン性イオン液体相とを振とうすることにより抽出実験を行った。水相中のReO4-濃度を誘導結合プラズマ質量分析法により測定し,抽出分離特性を評価したところ,ReO4-に対して高い抽出率が得られることが明らかになった。したがって,合成したプロトン性イオン液体は,TcO4-を高効率で抽出分離できることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に実施した内容は,概ね研究計画に沿ったものである。抽出剤を含有する新規プロトン性イオン液体を合成し,抽出剤かつ抽出媒体として用いて,ReO4-の高効率なイオン液体抽出系の構築に成功したことから,当初期待した通りの成果が得られていると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画に大きな変更はなく,当初の計画に沿って,環境水中に多く含まれる種々のイオンの抽出分離特性を調べることでReO4-に対する抽出選択性を評価するとともに,最適な抽出条件を確立する。その後,構築した抽出分離系を99TcO4-除去に応用し,実環境水を用いて99TcO4-の抽出を行うことを目指して研究を実施する。
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Causes of Carryover |
(理由) 当初予定していた設備備品の購入が不要な状況になったほか,プロトン性イオン液体合成用試薬や器具,溶媒抽出実験で使用する試薬・消耗品などが当初の予定よりも安価に入手できたため。 (使用計画) プロトン性イオン液体合成用試薬,溶媒抽出実験で使用する試薬・消耗品,イオンクロマトグラフ用消耗品,液体シンチレーションカウンタ用消耗品の購入のほか,テクネチウムの抽出実験で使用する装置や器具を充実させるために使用する予定である。
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