2022 Fiscal Year Research-status Report
過酸化水素酸性溶液の製造のための人工光合成システムの開発
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22K05183
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
阿部 敏之 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (20312481)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 過酸化水素 / 酸性溶液 / 人工光合成 / 有機p-n接合体 |
Outline of Annual Research Achievements |
亜鉛フタロシアニン(ZnPc, p型)とフラーレン(C60, n型)からなる有機p-n接合体を光カソード, 酸化コバルト(Co2O3)助触媒を担持したバナジン酸ビスマス(BiVO4)を光アノードとしてそれぞれ用い, 酸性条件で人工光合成型の過酸化水素生成反応を検討した. 両者のボルタモグラムを比較すると, 光カソード電流と光アノード電流が同時に発生する電位領域が存在していたことから, バイアス電圧を印加せずとも酸化還元反応が進行すると期待された. 実際, C60表面に金(Au)助触媒を担持した光カソード上では, 酸素還元に伴い選択的に過酸化水素が生じ, また, 光アノード上で水の酸化により酸素が生成した. 上記の系では, 光照射をするだけで酸化還元反応が進み, いわゆる人工光合成型の反応が起こったことが特筆される. また, 光カソード上での過酸化水素生成は可視全域の光エネルギーに応答して誘起されることも光電流の作用スペクトル測定の結果から明らかになった. しかし, 本系の過酸化水素生成に対するエネルギー変換効率は最大でも0.2 Vのバイアス電圧印加時で<0.01%であった. 本系における律速段階は酸素還元過程であることもわかり, 酸素還元速度の向上が高効率化の鍵を握っていると考えられる. そのため, まず, 酸素の二電子還元に対して活性な触媒の探索を行う必要がある. 各種炭素材料, 配位圏が制御されたコバルト単原子触媒, Fe-N4構造を含むπ共役共有結合有機ポリマーなど候補として, 担持法も含めて検討する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
酸性条件における人工光合成型の過酸化水素生成システムの一例を示すことができ, 国際的な学術論文誌上での公表にも至っているため.
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Strategy for Future Research Activity |
酸素の二電子還元に活性な光カソードについて, 有機p-n接合体や酸素還元触媒の探索・開発を基軸とした研究を推進する. 並行して, 水の酸化に活性な光アノードの探索・開発を行い, 酸性条件でより効率的な人工光合成型の過酸化水素生成系を構築する.
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