2022 Fiscal Year Research-status Report
環境汚染物質NOxおよびCOの分解無害化を指向した分子性卑金属錯体触媒の開発
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22K05194
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
隅本 倫徳 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (40414007)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 分解触媒 / 金属フタロシアニン / 窒素酸化物 / 触媒設計 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は本研究課題で「環境汚染物質の窒素酸化物(NOx)および一酸化炭素(CO)を容易に分解し無害化する新規卑金属触媒を開発する」ことを目的としている。現在,環境汚染物質は貴金属を使用した三元触媒が使用されており,コストや地殻内存在量の点から,新たな環境浄化触媒の創出が期待されている。申請者は量子化学計算により,使用用途に優れた機能性色素であるチタニアフタロシアニン(TiOPc)に環境浄化触媒としての機能を有する可能性を見出した。本研究では,オキソ金属フタロシアニン(MOPc)およびその類似化合物に焦点を置き,量子化学計算を用いた in silico スクリーニングにより,触媒設計,合成および実証実験を行う。本年度はMOPc(M = Zr, Mo, V)を触媒としたNOおよびCOの分解反応に関する反応予測および理論的評価を行った。これまでに行ったTiOPcを触媒とした反応と比較すると,ZrOPcを触媒として用いた場合,20 kcal/mol以上低い活性化自由エネルギーで反応が進行する可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MOPc(M = Ti, Zr, V, Mo)およびそれらの類似構造を用いて,NOx および CO の分解反応の反応解析を量子化学計算により行い,反応経路の有無,また律速段階の ΔG‡ 値の大きさに注目することで,反応のスクリーニングを行い、指標となる律速段階の ΔG‡ 値が低いものに関して,実験を行い実証することで,高価な貴金属を使わない新規環境浄化触媒を開発するために,一年目は,(1) MOPc(M = Zr, Mo, V)を用いた NO および CO の分解反応の反応経路探索,および(2) MOTBP(M = Ti, Zr, Mo, V)を用いた NO および CO の分解反応の反応経路探索,という二つの課題を挙げた。(1)については,ほぼ終了し,中心金属による反応機構や活性化自由エネルギーの情報が得られた。また(2)についても全ての中心金属に対して計算が終了している訳ではないが,PcとTBPでの反応機構に大差がないことを示した。以上の結果から,本研究課題はおおむね順調に進行していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は現在のところ,研究計画通りにおおむね順調に進行しているが,今後の課題は,実験による化合物の合成および反応性の評価である。今回,新たな触媒として利用している候補化合物の一部は,販売していないものも存在しており,合成からスタートさせる必要がある。そこで今後は実験化学の研究協力者と密にディスカッションすることにより,合成経路を検討していきたいと考える。また,2022年度の研究で反応進行が可能であると計算された反応機構に対して,実証実験を行う必要があり,こちらに関しては,触媒を入手できれば生成する化学物質の同定を含めて,大気環境を専門とした研究協力者による分析が可能であると考えている。
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Causes of Carryover |
申請書作成時には購入予定ではなかったが、ナノ材料解析統合ソフトウェアの購入を予定しており、それらを購入するための打ち合わせ等で時間がかかったため、次年度分に物品費を持ち越すこととなった。本年度、繰越額によりこのプログラムを購入する予定である。
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Research Products
(2 results)