2022 Fiscal Year Research-status Report
熱帯樹木由来高活性イソプレン合成酵素の探索とハイブリッド型発酵用高機能酵素の開発
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22K05195
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
屋 宏典 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 教授 (10177165)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 岳志 鹿児島大学, 理工学域工学系, 教授 (80505909)
堀谷 正樹 佐賀大学, 農学部, 准教授 (80532134)
稲福 征志 琉球大学, 農学部, 准教授 (90457458)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | イソプレン / イソプレン合成酵素 / クローニング / イソプレン発酵 / 酵素機能改変 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では多様且つイソプレン合成が活発な熱帯植物のイソプレン合成酵素(IspS)を広範囲に探索し、高活性を実現する分子情報を解明し、非石油資源の発酵系に適したハイブリッド型高機能IspSの設計・開発を行うことを目的とする。R4年度は高活性、高基質親和性を可能とするIspSのコンセンサス配列の解明を行う計画であった。一般的に、優良酵素の探索には保存配列を標的にして目的の酵素の遺伝子クローニングを行い、組換え酵素を調製してその性質を解析する方法が用いられる。しかしながら、個々の樹木のIspSについて遺伝子クローニングを行い、組換え酵素の特性を解析する方法は多大の労力と時間を要し、広範な樹種の探索には適していない。これに対し、申請者が開発したPing Pong法は採取した切り枝の温度依存的なイソプレン放出を人工気象室内で測定するもので、わずか1日で温度応答性を評価することができ、極めて短期間で優良なIspSの供給源となる樹種の絞り込みが可能である。今年度はこれまでイソプレン放出測定が行われていない単子葉類に樹種範囲を拡大して、Ping Pong法でIspSの一次スクリーニングを行った。琉球大学構内にある12種の単子葉類のイソプレン放出の温度依存性を調べ、10種(83%)がイソプレンを放出することを見出した。そのうち、ダンチクが最も高い温度依存性を示したので、IspSの遺伝子クローニングを試みた。IspSのコンセンサス配列を標的にしたRT-PCRにより、ダンチクIspSのコアー配列を得ることができた。ダンチク以外にミツヤヤシが特異な温度応答性を示したので、遺伝子クローニングの候補とした。次年度は、これらの樹種群のIspS遺伝子をクローニングして酵素学的特性を解析し、高機能酵素に特徴的なコンセンサスアミノ酸配列を明らかにする計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Ping Pong法による高イソプレン放出樹種の選別は概ね順調に進捗し、琉球大学構内でこれまで探索されていない単子葉類へとスクリーニング範囲を拡大して、イソプレン放出の温度依存性を調べることができた。構内に生育する単子葉類のうちヤシ科の植物12種の温度依存性を調べ、高い温度依存性を示す樹種を絞り込むことに成功した。しかしながら、引き続いての遺伝子クローニングのステップで、本研究に参加している学生が体調をくずしたため、全長のIspS cDNAの塩基配列の決定に至っていない。したがって、IspSの酵素学的特性の解析には至らず、全体の進捗が遅れた。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度新規に選抜した高い温度応答性を示した単子葉類のIspSの遺伝子クローニングを推進する。一方、既に明らかにされている単子葉類以外の熱帯樹木で高い温度応答性を示し、酵素学的特性も明らかにされているモクマオウIspSの結晶構造解析を行う。高温度応答性単子葉類IspSの遺伝子クローニングとタンパク質発現を行い、酵素学的な特性を明らかにする。アミノ酸配列の比較により、高活性を発現するコンセンサスがあるかどうかについて検討する。IspSの3D構造については、結晶構造解析と併せて、AIを活用したモデリングソフトAlphaFold2により、アミノ酸配列をもとにIspSの構造を予測する。AlphaFold2は高い蓋然性でタンパク質構造を予測することが可能とされているが、タンパク質中に含まれる金属原子を配位することはできない。IspSはマグネシウムあるいはマンガンを活性部位に含む金属タンパク質である。本研究では、AlphaFold2に金属原子をスーパーインポーズした後、分子シミュレーションによりインタクトなIspSの構造を構築する手法の開発を試みる。続いて、得られた3D構造をもとに、基質とのドッキング複合体をモデリングして基質と活性部位の反応を定量化する手法を開発し、酵素反応速度と構造との活性相関を明らかにすることを試みる。
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Causes of Carryover |
初年度の使用残は主に遺伝子クローニング実験の遅れによるものである。一次スクリーニングは概ね順調に進捗したので、これらのデータを精査して、候補樹種の絞り込みを行い、使用残額については主にクローニング実験に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)