2022 Fiscal Year Research-status Report
親水性ゲルの内部ネットワークを反応場とする新規光触媒材料の開発
Project/Area Number |
22K05205
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
杉田 剛 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 物質科学研究センター, 研究職 (80772342)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関根 由莉奈 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 物質科学研究センター, 研究副主幹 (00636912)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 光触媒 / 親水性ゲル / 水浄化 |
Outline of Annual Research Achievements |
光触媒ゲルの合成について、セルロースナノファイバーとクエン酸をゲル原料として、光触媒粉末として市販のWO3 (< 100 nm)を用いて検討した。2 wt.%のCMCFを用いることで、WO3粉末は良好な分散を示した。0.5 wt.%程度になるとWO3粉末が沈降してしまい、ゲル全体に光触媒を分散させることができなかった。チクソトロピーによる粉末の高分散状態を保持するためには、1 wt.%以上のCMCF濃度が必要であることが示唆された。また、CMCF濃度が5 wt.%程度になると粘度が高く、光触媒粉末を均一に分散させることが困難であった。よって、現状の最適CMCF濃度は2 wt.%とした。 光触媒ゲルの内部ネットワーク構造については、光触媒粉末を混合したCMCFゲルの凍結方法によって、スポンジ状や層状といったゲル形状の制御が可能であることが明らかとなった。どちらの構造をとった場合でも、厚さ約1.5 cmの光触媒ゲルの底面まで可視光が透過した。これは、CMCFゲルが含水状態で半透明になることに起因しており、担持した光触媒粉末が効率良く光を吸収できることを示唆している。 作成したWO3含有光触媒ゲルの性能評価を、インジゴカルミン溶液の吸着分解を通して行った。pH 2及び5どちらにおいてもインジゴカルミンのゲル及びWO3粉末への吸着は確認されなかった。インジゴカルミン溶液が光触媒ゲル内部を通水する形で光触媒反応させることで、高効率な光触媒反応が可能であった。特に、pH 2の条件では、光触媒ゲルはWO3粉末の懸濁状態よりも優れた分解能を示した。これは、WO3粒子がゲルに保持されることにより、等電点(pH 2)付近でも凝集しなかったためと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光触媒ゲルの形状制御試験から内部ネットワーク構造が制御可能であるという結果が得られ、またスポンジ状光触媒ゲル、層状光触媒ゲルどちらにおいても良好な有機色素分解能力が示され、使用方法によっては光触媒懸濁液を超える色素分解能力が得られているため、当初の予定通り進行していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
光触媒ゲルは合成が容易であり、形状も比較的自由に制御できるため、ゲル材料の厚みやゲルの細孔径など、ゲル物性が及ぼす光触媒反応効率への影響について詳しく調べる予定である。また、現状のCMCFとWO3を原料とした光触媒ゲルだけでなく、他の生分解性ポリマーや自作の光触媒粉末を用いた光触媒ゲルについても検討し、ゲルの化学的性質の影響評価や、ゲル内部を反応場とする場合の最適な光触媒の物性について評価する予定である。
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Causes of Carryover |
当初計画で購入を予定していた、シリンジポンプ等マイクロリアクター用物品について、ゲル内部における光触媒の分散状態及び流路の検討に有用なSAXSやSANSの利用の目途が立ったため、今年度の購入を取りやめ、SAXS測定用光触媒ゲルの合成やSAXS、SANSデータの解析に便利なグラフ作成ソフトを購入したことから次年度使用額が生じた。 次年度使用額は、次年度以降に実施する研究結果に応じて、マイクロリアクター用物品の購入、もしくは、SAXS及びSANS測定用ゲルの合成や異なる特性のゲルの合成に使用する消耗品の他、新規光触媒の合成用消耗品の購入に係る費用として、次年度分研究費と合わせて使用する予定である。
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