2023 Fiscal Year Research-status Report
垂直貫通ナノチャンネル積層膜を反応場とする光触媒反応系の構築
Project/Area Number |
22K05215
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
浅岡 定幸 京都工芸繊維大学, 材料化学系, 准教授 (50336525)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 光触媒反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) 連結点の分子設計:親・疎水鎖の連結点の側方置換基としてアジド基を導入した両親媒性液晶ブロック共重合体(LBC)に対して、3-エチニルピリジンを配位子としてもつReまたはPt錯体をClick反応させることにより、定量的に導入することに成功した。得られたLBCはいずれも表面に対して垂直貫通したシリンダー型のミクロ相分離構造を形成することを確認している。またRe錯体を導入したLBCについては、従来型の主鎖上に導入したピリジルトリアゾール配位子に対してRe錯体を形成させたLBCに比べ、同等以上の二酸化炭素の光還元活性を有していることを確認した。 (2) 疎水性マトリクス部の利用:液晶メソゲンにビフェニルをもつLBCは架橋性を持たないため、架橋点としてスチルベンを一部導入したランダム共重合体を合成し、自立膜の作製を試みた。スチルベンの添加比を検討したが、20%までスチルベンを増やしても自立膜として十分な強度を得ることができなかった。 (3) 親水性シリンダー部の利用:連結点に亜鉛ポルフィリンをもつLBC膜に対して、Ptナノ粒子溶液を透過させ、比較的大きな粒子を表面に堆積させた薄膜を作製した。これに電荷キャリアとなるメチルビオロゲン存在下、水中で光照射を試みたが、現在までに水素の生成を確認することができていない。 (4) 水中での光反応:従来型の主鎖上に導入したピリジルトリアゾール配位子に対してRe錯体を形成させたLBCを用い、水中での二酸化炭素の光還元反応を検討した。数種の犠牲剤を検討したが、いずれの場合も気相中に一酸化炭素を選択的に与え、水素を全く副生しないことを見出した。無機・有機の光触媒によらず、一般に水中での反応では水素が副生することから、本系は特殊なケースであるものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)のLBCの分子設計については合成経路をほぼ確立しつつある。また、今回新たに水中での反応を検討したところ、本系は水素の副生がないという特徴を有していることを見出した。(2)および(3)ではやや進捗が遅れているのものの、(4)により新たな展開が期待されることから、研究は概ね順調に進展しているものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 連結点の分子設計:これまでの二酸化炭素の光還元触媒、水素生成触媒に加え、光増感剤となるRuビピリジン錯体、および水の光酸化触媒であるMnポルフィリン錯体の導入を進める。 (2) 疎水性マトリクス部の利用:ビフェニルを液晶メソゲンとするLBCの自立膜化については、ビフェニルとスチルベンの吸収波長が重なることから、光架橋が阻害されているものと考えている。カルコンはより長波長側に吸収をもつことから、長波長側の選択励起によって光架橋を検討する。 (3) 親水性シリンダー部の利用:Ptナノ粒子については、一般に水素生成反応の触媒として採用されているものとは異なるK2PtCl4を原料とする合成法を採っているため、十分な触媒活性が得られなかったものと考えられる。今後より一般的なK2PtCl6を用いた合成法に変更する。 (4) 水中での光反応:反応溶媒として有機溶媒を用いないことは環境負荷の面からも望ましいことから、今後さらに水中での反応について実用性の評価を進める予定である。現状の平膜での反応では、照射面積が狭いため反応効率が限定されている。本研究の薄膜は基材の性情によらず「塗って」「熱処理」するだけで再現性よく垂直貫通したシリンダー型のミクロ相分離構造を与えることから、光ファイバー表面にコートする手法や、中空糸膜表面にコートして透過膜として利用する方法を採ることにより、反応効率の向上を目指す。
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Causes of Carryover |
本年度に費やした薬品・材料・顕微鏡関連消耗品等は、他の研究課題と共用可能であったことから、そちらの予算で購入することとした。なお次年度以降には合成量の増加、成膜を含むプロセス、および光触媒反応の検討回数の大幅な増加が見込まれることから、予算を繰越し、充当することした。
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Research Products
(2 results)