2023 Fiscal Year Research-status Report
テトラベンゾポルフィリンの典型元素錯体化によるn型有機半導体材料の開発
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22K05255
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松尾 恭平 京都大学, 化学研究所, 助教 (00778904)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 有機半導体 / 有機電界効果トランジスタ / ポルフィリン |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に合成した非対称に置換したテトラベンゾポルフィリン(TBP)誘導体を用いて、錯体化およびそれらの単結晶を用いた有機電界効果トランジスタ(OFET)素子の特性評価を行った。X線結晶構造解析の結果、亜鉛錯体および銅錯体はフリーベース体とほぼ同一の結晶構造を与え、OFET特性においてもほぼ同程度の電荷移動度を示すことが明らかになった。またこれらの誘導体はすべて結晶中で、分子が反平行に向き合いながら積層し、局所的な二量体構造を形成しており、このことが電荷移動度の向上を阻害していると考えられた。そこで新たに片側の置換基にのみ長いアルキル基を有する非対称TBP誘導体を合成した。得られた化合物は二分子膜様の層状性結晶構造を与え、分子層内部では分子は同じ方向に向き合いながら長距離に秩序だった積層構造を形成していた。その結果、単結晶OFET素子において電荷移動度の向上が見られた。今後、中心元素導入も検討する予定である。 また、高い溶解性と熱安定性を有するOFET材料の創出を目指し、環縮小ポルフィリノイドの一種である10-ヘテロコロール骨格に着目した。10-ヘテロコロールは屈曲した環構造に由来する双極子モーメントに加え、二次元的に広がったπ共役系を有するため、近年注目を集める屈曲型OFET材料の主骨格として有望であると考えた。検討の結果、ヘテロ原子として硫黄原子を導入した分子の合成に成功し、狙い通り、同じ置換基を有するTBP誘導体に比べて溶解性が向上するのを明らかにした。またスピンコート法で作成した薄膜を用いてOFET素子を作製したところ、比較的良好な電荷移動度を与え、塗布型有機半導体の主骨格として有望であることが示された。今後は単結晶OFETによる評価や素子の熱安定性を検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
様々な置換基を有するTBP誘導体を合成し、その一部でOFET材料として興味深い結晶構造を与えるものが見つかってきている。これらの知見を基にして高性能な有機半導体を開発する新たな分子設計指針が得られると期待される。また中心元素導入の他、環骨格へのヘテロ原子の導入にも成功し、TBP誘導体とは全く異なる光電子物性を有するOFET材料を開発する足掛かりが得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、新たな誘導体の合成と構造解析、電子物性の評価、有機半導体特性の評価に取り組む予定である。また骨格にヘテロ原子を導入した誘導体を用いたOFET素子の検討にも取り組む予定である。
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Causes of Carryover |
前年度未使用額も残っていたことおよび、有機電界効果トランジスタの評価に必要な消耗品の在庫が十分であったため消耗品にかかる支出が予定より減ったためである。次年度は素子作製の検討を重点的に行うため、消耗品の他必要な装置の整備に使用する予定である。
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