2022 Fiscal Year Research-status Report
層状複水酸化物とナノ炭素材料を基材とした多機能性ドラッグデリバリー材料の創製
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22K05263
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
會澤 純雄 岩手大学, 理工学部, 准教授 (40333752)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 久子 愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 教授 (20500359)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 層状複水酸化物 / ナノ炭素材料 / ドラッグデリバリー材料 / 抗がん剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は層状複水酸化物(LDH)とナノ炭素材料(NCM)を複合化した、医薬学的用途に向けたドラッグデリバリー(DD)材料の創製である。本年度は、DD材料に応用可能な粒子サイズ100~200 nmかつ高分散性の抗がん剤/LDHの合成を達成するため、無溶媒、常温・常圧下でDD材料に対応可能な粒子サイズのLDHを合成できる固相反応法を用い、LDHへの抗がん剤(5-フルオロウラシル:5-FU)の取り込み挙動を調べた。また、分散剤としてポリビニルアルコール(PVA)を所定量添加し、同方法による5-FU/LDHの合成を試み、粒子サイズや分散性、5-FUの取り込み挙動に及ぼすPVAの影響を検討した。 5-FU/LDHとPVA(10%)/5-FU/LDHの面間隔値はそれぞれ0.80 nm、0.79 nmと変化せず、LDH層間への5-FUとPVAの取り込みが示唆された。5-FU/LDHの粒子サイズは250~500 nm、PVA(10%)/5-FU/LDHの粒子サイズは、PVAとLDH表面との界面相互作用による反発のため凝集を抑えることができ、100~200 nmであることが示された。この結果から、DD材料に応用可能な粒子サイズのLDHの合成方法を確立することができた。また、PVAの添加量(5~50%)は5-FU/LDHの粒子サイズに影響し、5-FU/LDH量に対してPVAは10%が最適な添加量であることが明らかになった。5-FU/LDHおよびPVA(10%)/5-FU/LDHの組成分析の結果、5-FUの取り込み量はそれぞれLDHのイオン交換容量35%、25%となり、共存する硝酸イオンやPVAがLDH層間に取り込まれ、5-FUの取り込み量の減少の原因と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の年度計画の目標は高分散性の抗がん剤/LDHの合成であった。高分散性の抗がん剤/LDHの合成は、LDHの一般的な合成方法である共沈法および急速混合法を検討する予定だった。しかし、固相反応法による抗がん剤/LDHの合成と粒子サイズ制御を確立でき、さらに分散剤が抗がん剤/LDHの粒子サイズに及ぼす影響も明らかにすることができたため、今後の抗がん剤/LDHの合成は、固相反応法を用いて実施する。また、PVA添加による抗がん剤の取り込み量の減少を抑えながら粒子サイズを制御するという課題はあるが、5-FUの添加量などを調整し、イオン交換容量の50%程度になるよう検討が必要である。したがって、本課題はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
カーボンナノチューブ(CNT)やナノダイヤモンド(ND)、カーボン量子ドット(CQDs)などのナノ炭素材料(NCM)は、生態的合成が高く、低毒性であることから、生体・医療分野への応用に適した材料である。とくにNDやCQDsは、数nmから数十nmの粒子サイズで、蛍光特性や化学的に不活性な性質を持ち、表面電荷の特徴から様々な修飾、拡張性、柔軟性、汎用性を兼ね備えたDD材料としての可能性が期待されている。そこで、本課題ではNCMをLDHの表面に結合させることにより、薬剤/LDHの凝集の抑制、蛍光プローブとしての利用、さらにLDHの表面に生体分子を結合させる足場としての利用を考えている。本年度は、5-FU/LDHの粒子サイズや分散性に及ぼすNCMの影響を調べながら、DD材料に対応可能なNCM/5-FU/LDHの合成について検討する予定である。 R4年度で確立した5-FU/LDHの合成法である固相反応法を用い、そこにNDやCQDsなどを加えことで、静電相互作用により5-FU/LDHの表面にNCMを結合させてNCM/5-FU/LDH合成する。その際、NCM/5-FU/LDHの粒子サイズに及ぼすNCM:抗がん剤:LDHの質量・固液比、合成pH、NCMの粒子サイズの影響などを系統的に調べ、高分散性のNCM/5-FU/LDHの合成法の確立を目指す。また、CQDsは既知の方法を用いて合成する計画としているが、CQDsの粒子サイズや分散性、表面電荷は本課題の重要なポイントになると考えているため、CQDsの合成についても検討する予定である。
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