2022 Fiscal Year Research-status Report
Electronic structure of dilute hydrogen in functional materials
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22K05275
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
平石 雅俊 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 研究員 (80712653)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ミュオン / 不純物水素 / 化学シフト |
Outline of Annual Research Achievements |
研究を開始した本年度は、海外の実験施設でしか行えない高横磁場下でのミュオンスピン回転実験を行うためのビームタイム申請を行った。残念ながら2022年後期でのビームタイムでは不採択となってしまったが、2023年前期用ビームタイム申請では、高い優先度での採択となった。したがって、本年度中に実験を行うことができなかったので、あらかじめ取得してある予備データ (SnO2, InGaZnO4) のデータ解析と、両物質における希薄水素による構造緩和計算をおこなった。 ミュオン実験のデータ解析で得られた擬似水素としてのミュオン周波数シフトと、構造緩和計算で得られた水素の構造パラメータは、これまでに報告されている水素化物でのH-NMRによる化学シフトと構造パラメータの間で見られる直線関係と矛盾しない結果を得た。本研究で提案する手法が、希薄水素の電子状態 (局所構造、荷電状態) を調べる新たな手法となりうることを支持するものである。 しかしながら解析で得られた擬似水素としてのミュオンの周波数シフトは、H-NMRで報告されている直線関係からわずかに負のオフセットを示している。現在のところ、不純物水素として局所的に歪んだ構造パラメータを用いていることが原因と考えているが、データ点が2点しかないこともあり、詳しい原因はまだわかっていない (既報の構造パラメータでは水素結合の角度が180度となっているが、不純物水素の場合はその角度が180度からわずかにずれている)。これは今後の検討課題である。 また、2023年に実験を行う予定の試料における、希薄水素による構造緩和計算も順次おこなっており、既報の局所構造と矛盾ない結果が得られている。実験が行えれば、すぐさま構造パラメータとの関係を調べられる状況である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
高横磁場下でのミュオン実験は、現状では海外施設でのみ行える実験である。2022年後期 (10月-12月) 用のビームタイム申請では不採択となってしまった。このため、本年度では実験を行うことができず、あらかじめ取得してあった予備データの解析にとどまった。なお、2023年前期 (4月-9月) 用のビームタイム申請は (高い優先度で) 採択されたので、本格的な実験を行える予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
擬似水素としてのミュオンの周波数シフトと局所構造パラメータを関係付けるモデルを構築する。既報の水素化物におけるH-NMRでは、水素結合しているOH-とO2-間の距離 (H+)、またはヒドリドイオンH-と陽イオン間の距離と水素の化学シフトに直線関係が見出されている。不純物水素としてのミュオンの実験データでは、局所的に歪んだ効果を取り入れる必要があると考えているが、それだけにとらわれず、水素や近傍原子のBader電荷などによる補正が可能かどうかなど、幅広い視点でデータ解析とその解釈を行う。
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Causes of Carryover |
理由: 依然として新型コロナウイルス (COVID-19) の影響が残っており、航空券などが以前よりも高額であること、また、半導体不足の影響などもあり、予定していた計算機や有償ソフトウェアの購入を見送ったことで残額が生じた (2022年度の研究では、既存の計算機とオープンソースのソフトウェアを使用した)。 使用計画: 海外実験に必要な旅費概算を考慮し、大規模な構造緩和計算に必要なリソースの拡充に使用する。
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Research Products
(5 results)