2023 Fiscal Year Research-status Report
アンモニアの特性を利用した固体材料と関連する機能性の創出
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22K05289
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
田中 将嗣 九州工業大学, 大学院工学研究院, 准教授 (90597650)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | アンモニア関連機能性材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
アンモニアは肥料や工業用の用途のほかに、カーボンフリーの燃料実現に向けた取り組みが盛んである。エネルギーキャリアとしての活用を想定する場合、アンモニア自身の材料としての性質・利用価値向上も重要な研究といえる。本研究ではアンモニアを使った無機化合物合成技術を応用し、遷移金属アミドと遷移金属錯体塩を利用して解離平衡状態を固体中で実現しようとしている。 2023年度は遷移金属ハロゲン化物にNH4Clを配位させる反応を試み、遷移金属錯体アンモニウム塩の系統的な合成を行った。四塩化ジルコニウムZrCl4と塩化アンモニウムNH4Clを真空封管し、適切な温度勾配を付けた電気炉に配置すると単結晶が合成できた。これによって(NH4)2MCl6 (M = Ti, Zr, Hf)のすべての単結晶合成法を確立した。 またこれらの結晶を1気圧のアンモニアガス下に保持すると、著しくアンモニアガスを吸蔵し、吸蔵後の加熱によりそれらを放出することが判明した。X線回折と熱重量測定・放出ガス分析によって放出後はもとの化合物が回収されることが明らかになった。そこで高精度に定量的評価を行うための基盤形成にも尽力し、示差熱同時熱分析装置を研究室内に導入した。これらの成果は日本金属学会にて発表した。 上記検討に加え、当初計画していた高圧力を用いた合成反応にも着手した。上記で得られた単結晶のうち、遷移金属種を固溶させることができればアンモニアの放出温度を細かくチューニング可能であると考え、固溶体合成に取り組んだ。常圧力下では完全に相が分離してしまうことが判明したが、3GPa程度の高圧力をかけた状態で800℃程度の高温から室温まで急冷することによって固溶体の単結晶が得られることが判明した。この反応は次年度以降にも継続して検討する予定である。また原理検証で得られた成果は国際会議で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は遷移金属ハロゲン化物へNH4Clを効率よく配位させて単結晶化する手法が確立され、当初計画していた結晶成長反応機構の解明が進んだ。さらにはここで得られた単結晶がアンモニアを著しく吸蔵することも発見でき、エネルギー貯蔵の観点において影響が大であると認識している。次年度以降に着手を計画していた高圧力を利用した合成も進めることができ、上記結晶の固溶体合成に成功してアンモニア吸蔵材料の開発研究も広がりを見せている。さらには当初計画では自身の研究室内での分析を断念していた熱分析装置が導入でき、想定していたよりもはるかに幅広い研究が行えるようになった。これらのことより、当初の計画以上に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に得られた、四塩化チタンでのNH2基の置換反応に関する知見と、本年度得られた遷移金属錯体アンモニウム塩合成に関する知見を融合し、本研究の主目的である自己解離固体の合成検討を行う。合成反応制御の検討において、本年度導入した示差熱同時熱分析装置を用いた検討項目も追加する。出発物質や合成反応後に得られる化合物の熱分解過程、および吸熱・発熱反応の有無等を知り、化学反応経路の推定に役立てる。 また「関連物質の機能性開拓」の点においても、新たな糸口が見いだされつつある「アンモニア吸蔵特性」を主な研究対象として並行する。検討には上記分析装置を用い、アンモニア吸蔵した化合物の試料加熱過程における重量変化を測定して貯蔵量を定量的に見積る。さらに遷移金属種を変えた場合等においても特性の系統的な評価を行う。 これらの検討によって得られた成果は論文としてまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
前年度に行った前倒し支払請求で、海外での研究成果発表における航空券価格の高騰と円安の影響を考慮して余裕を持たせて行っている。次年度は消耗品費および国内学会発表旅費等として使用する予定である。
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