2022 Fiscal Year Research-status Report
Development of CNT modified electrode for multivalent ion battery anode
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22K05291
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Research Institution | Toyota Technological Institute |
Principal Investigator |
原 正則 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40457825)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 二次電池 / カーボンナノチューブ / アノード / 多価イオン / 化学気相成長 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、Li以外のより埋蔵量の多い金属イオン、特に電池容量の大きい多価イオンを用いた二次電池のアノードに適用する新規な電極の開発を目的としている。この電極の開発において、これまでLiイオン二次電池のアノードとして開発してきたカーボンナノチューブ(CNT)修飾電極の活用とイオン種に合わせた構造の最適化を研究テーマとしている。2022年度は、CNT電極の開発において、(1)電池容量に大きく影響する電極の表面積の向上、つまり集電板上に直接、垂直配向させて合成したCNTの成長の向上、および(2)電池に用いるイオン種による集電基板との合金化への対応のための異なる集電板やバリア層上でのCNTの合成反応について研究を行った。 垂直配向したCNTの成長量の向上では、アルコール触媒化学気相成長(AC-CVD)によりCNTの合成を行った場合、触媒に用いるCoの量を制御することで最大で約 5 μm程度までCNTの成長量を伸ばせること、さらにAC-CVD後の垂直配向したCNT膜上に再度、Co触媒を担持してAC-CVDを行う多段階合成を行うことで、3回の多段階合成により約10 μm程度までCNTの成長量が向上することが分かった。また、多段階合成したCNTを用いてLiイオン二次電池のアノードとしての充放電容量の測定を行った結果、CNTの成長量の向上に伴い容量が向上した。さらに、多段階合成におけるCNTの成長メカニズムについて透過型電子顕微鏡を用いて評価を行った。 異なる集電基板上でのCNTの合成について、一般的に用いられるCu基板上にCrおよびAlのバリア層をスパッタした基板上でのAC-CVDによるCNTの合成、および高い安定性を持つインバー基板上へのマイクロ波プラズマ増強化学気相成長(MPE-CVD)によるCNTの合成を行い、それぞれ約5 μm程度の垂直配向CNTの成長に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
規則的に配列して合成された垂直配向CNTで修飾した電極では、電極の反応表面積はCNTの成長量に依存性するため、充放電の容量や出力電流がCNTの長尺化により増加する。そのため、高容量の電極開発に向けて長尺のCNTを合成する必要がある。また、垂直配向CNTは通常、多層構造のCNT(多層CNT)であるが、層数による充放電容量への影響については明確になっていない。2022年度の研究においては、AC-CVDにより合成した垂直配向CNTの成長量を増やすために、CNT合成後にさらにAC-CVDの触媒であるCoを担持して再合成を行う多段階成長法の開発を行った。多段階合成により、AC-CVD後のCNTの先端からさらにCNTの成長が進むことでCNTの成長が増加することが分かった。本研究では3回まで多段階合成を行うことにより、CNT長さが約10 μmまで増加することが分かった。さらに、透過型電子顕微鏡での計測により、追加成長したCNTは層数が基になったCNTよりも減少することが分かった。これにより、多段階合成を行うとCNTの長さ、つまりCNTの表面積に増加に比べ、重量の増加が抑制されることが分かった。多段階合成したCNT電極のLiイオンの充放電容量を計測した結果、CNT長の増加により重量当たりの電池容量が増加し、3回AC-CVDを行ったCNT電極では既存の黒鉛電極を超える350 mAh/g以上の容量をもつ電極の開発に成功した。 イオン種による電極材の影響を評価するために用いる電極の作製では、電極基板に用いる金属を変えてCNTの合成条件の確立を行い、電極での充放電特性の評価を行った。集電板のCu上に形成するバリア層の金属薄膜では、Alを用いた場合、Crを用いた場合に比べて初期充放電反応での不可逆容量が増加し、AlとLiイオンとの合金化反応が影響することが示された。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度の研究では、2022年度の研究で作製したCNT電極を用いて、Liイオン以外の金属イオン(Na、K、Mg、Caイオンなど)の充放電反応について計測を行う。2022年度の研究より、実用的な電池の電極活物質層の厚さである10 μm以上のCNT膜厚を持つ電極の作製が可能となったため、これらの電極を用いてCNT膜厚や電極基板の種類による各イオン種の電池反応挙動への影響について測定を行うことで、イオン種によるカーボン材料のアノードとの反応特性の違いについて明らかにし、イオン種に合わせた電極設計の指針を得ることを目的とする。 電池の作製においては、電解液には市販の電解質を含む有機溶媒もしくはイオン液体を用い、対極には各金属の板を用い、2局式のセルを用いて充放電反応の特性評価を行う。また、in-situラマン分光セルを用いて充放電過程のラマン分光測定を行い、金属イオン種による反応挙動について比較を行う。充放電測定後は、電極のXPS測定を行い、充放電の反応過程で形成されるsolid-electrolyte interface (SEI)層や電極の分解反応について分析を行う。これにより、電池に用いる金属イオン種による電極反応の特性について比較を行い、反応のメカニズムの解明を試みる。 電極の合成のおいては、CNTの更なる長尺化のためのCVD合成条件の最適化に加えて、CNTの修飾(酸化に処理による欠陥の導入など)による充放電反応への影響の調査や、他のアノード材と複合化した電極の合成を試みる。これにより、電極の更なる高容量化を目指す。
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Research Products
(1 results)