2022 Fiscal Year Research-status Report
水と酸素を原料とする光電気化学的な過酸化水素合成の新展開
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22K05293
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
福 康二郎 関西大学, 環境都市工学部, 准教授 (10711765)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 過酸化水素 / 光電気化学反応 / 水 / 酸素 / イオン液体 / 酸化銅 / 太陽光 |
Outline of Annual Research Achievements |
光アノードによる水からの酸化的な過酸化水素合成に加え、電極の疎水化による過酸化水素の分解を抑制することで、水と酸素からの高効率な過酸化水素合成・蓄積を実現する光電気化学システムの確立を最終目的にしている。今年度は、水からの過酸化水素合成のための光アノード(①)と、酸素からの過酸化水素合成のための光カソード(②)の設計について、次の項目を実施した。 ① 水からの過酸化水素合成に及ぼすイオン液体の複合効果 疎水性のイミダゾリウム型イオン液体(IL)を、バナジン酸ビスマス(BiVO4)光アノード上に、ドクターブレード法で塗布・乾燥させた電極(疎水性IL/BiVO4)を作成した。これらの電極を用いて、擬似太陽光照射下、炭酸水素カリウム水溶液中での水からの過酸化水素合成を検討した。疎水性IL/BiVO4は、BiVO4光アノード単独の場合と同程度の光電流-電圧特性を示しながら、BiVO4光アノード単独よりも高いファラデー効率での過酸化水素合成および過酸化水素蓄積を達成した。ILの疎水性効果により、生成した親水性の過酸化水素と、BiVO4との接触が抑制されることで、過酸化水素から酸素への酸化分解が抑制されたと考察している。 ② 酸化銅(I)(Cu2O)光カソードを用いた酸素からの過酸化水素合成 可視光応答性の光触媒として知られるCu2Oを光カソードとして利用した酸素からの過酸化水素合成を検討した。Cu2O光カソードは、電着法を用いて作成した。擬似太陽光照射下において、過酸化水素の生成・蓄積が確認された。固定電圧を印加しながら、各種波長の可視光線を照射することで光電流の応答性を確認したところ、Cu2O光カソードの可視光吸収スペクトルと光電流密度の挙動は良い一致を示した。Cu2Oが、酸素からの過酸化水素合成・蓄積を達成するための光カソードとして利用可能であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
水からの過酸化水素合成・蓄積を達成する光アノードについては、BiVO4光アノード上に疎水性ILを導入することで、BiVO4由来の高い光酸化電流特性を維持しながら、BiVO4光アノード単独よりも過酸化水素合成のファラデー効率および過酸化水素蓄積量を向上させることに成功している。また、過酸化水素を予め添加した光電気化学反応試験において、疎水性ILが過酸化水素の酸化分解抑制に大きく寄与することも明らかにしている。 またCu2Oが、酸素からの過酸化水素合成・蓄積を達成するための可視光応答性光カソードして機能することも明らかにしている。 両光電極において、過酸化水素生成効率の更なる向上および過酸化水素分解抑制効果の付与を達成できれば、両光電極を融合することによる『太陽光エネルギーを活用した水と酸素からの過酸化水素合成・蓄積』を実現する画期的な光電気化学システムの構築が十分に期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の通り、水と酸素を原料にした酸化還元的な過酸化水素合成・蓄積を実現する各光電極の候補材料は既に見つかっている。しかしながら、疎水性IL/BiVO4については、反応後にILの脱離も確認されており、過酸化水素蓄積量は十分ではない。今後は、疎水性ILをBiVO4上へ強固に固定化するための設計を組み込むことで、疎水性IL/BiVO4の安定性向上を達成し、過酸化水素蓄積量の向上を目指す。 Cu2O光カソードについても、生成した過酸化水素の分解反応が確認されている。Cu2O光カソード表面への疎水性処理を施すことで、過酸化水素蓄積量の更なる向上が見込まれる。 これらの光電極を融合することで、『太陽光エネルギーを活用した水と酸素からの過酸化水素合成・蓄積』を実現する画期的な光電気化学システムの構築を目指す。
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Causes of Carryover |
昨今の部品供給不足の問題により、購入予定物品の2022年度内納品が困難になったため。2023年度の計画に必要な物品類の導入に活用する。
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Research Products
(12 results)