2022 Fiscal Year Research-status Report
酸化物イオン-電子伝導体複相膜の微構造制御とエアセパレー ション
Project/Area Number |
22K05294
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
打越 哲郎 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, グループリーダー (90354216)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 達 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, グループリーダー (50267407)
小林 清 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主幹研究員 (90357020)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | エアセパレーション / 酸素分離膜 / 酸化物イオン伝導体 / 電子伝導体 / 粉体プロセス |
Outline of Annual Research Achievements |
エアセパレーションガスと呼ばれる窒素、酸素、アルゴンガスは、大気の主な構成物質であり、大気から選択分離・精製することで工業的に製造される。中でも、酸素の用途は、産業、医療分野など多岐に渡り、高純度な酸素をその場で製造・供給できるオンサイト型の酸素製造装置へのニーズは高まっている。酸化物イオンと電子の混合伝導性体(MIEC)を用いた酸素分離膜は、膜両側の酸素分圧差を駆動力とし、酸化物イオンを介して高純度な酸素を選択分離する電気化学デバイスとして有望である。しかし、高い酸化物イオン拡散速度を示すペロブスカイト型酸化物MIECを素材とする酸素分離膜でも、材料組成の最適化による酸化物イオン伝導性と電子伝導性の両立やそれらの向上には限界があり、より高い酸化物イオン拡散性を示す酸化物イオン伝導体と電子伝導体を組み合わせたコンポジット材料からなる2相複合膜への期待が高まっている。2022年度は、YSZ-C複相膜の作製と評価を行った。8Y-ZrO2粉末、蒸留水、分散剤としてのポリアクリル酸アンモニウムを混合しスラリーを調製した。 次に、カーボンフェルト(直径20mmΦ)の空隙中にスラリーを真空含浸させた。その後、試料を乾燥し、80 MPaの印加圧力下で1200、1400、および1600℃で10分間、放電プラズマ焼結により焼結した。 焼結後のYSZとカーボンフェルト間の相安定性と化学的適合性はXRDとSEMにより確認した。 1200℃および1400℃における焼結膜は8YSZおよびグラファイトであったが、焼結温度を1600℃まで上げると、第二相である炭化ジルコニアの小さなピークが観察された。1200、1400、および1600℃で焼結した膜の微細構造は、膜が完全に緻密化されており、良好な2相複合膜が作製できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画当初は、酸化物イオン―電子混合伝導体(MIEC)の単相膜の微構造制御を初年度に計画していたが、その後の予備実験で単相膜では限界もあることが分かり、酸化物イオン伝導と電子伝導の役割を別々の材料に持たせた、酸化物イオン伝導体と電子伝導体からなる2相複合膜の作製を中心とした検討を進めた。これまでに、いくつかの複相膜が提案されているが、共焼結過程における酸化物イオン伝導体と電子伝導体の界面反応が問題となるケースが指摘されており、未だ十分に検討されていない。また、酸化物イオン伝導体相と電子伝導体相がアイランドとなりやすく、パーコレーション構造が確保されたコンポジットを創製することの困難さもある。本研究では、酸化物イオン伝導体として8 mol%イットリア安定化ジルコニア (8YSZ)、電子伝導体としてカーボンフェルト(C-felt)または発泡Niシート(Ni-form)を選び、8YSZスラリーをC-feltまたはNi-formの空隙に充填するコロイド成形法と放電プラズマ焼結(SPS)法を組み合わせたプロセスを提案し、スラリー、焼結温度、印加圧力、焼結時間などの条件の最適化で、 YSZとC-feltまたはNi-formがパーコレーション構造を持ち、緻密かつガスタイトなYSZ-CまたはYSZ-Ni複合膜の作製に成功した。YSZ-C-felt複合膜酸素分離膜は550℃で0.42ml(STP)/min・cm2の酸素分離能を示し、本プロセスの有効性が示された。しかし高温での大気供給側でのC-feltの酸化は避けらなかった。また、発泡Ni空隙中へのYSZスラリーの高密度充填に限界があり、また金属の融点に依存する焼結温度の上限から、YSZ相の緻密化に制限があるため、酸素分離性能の向上には、8YSZ相の緻密化を可能するためのプロセス改良が必要とされた。
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Strategy for Future Research Activity |
カーボンフェルトまたは発泡Niに替わる電子伝導体として、高融点、高耐酸化性の観点で、いくつかの発泡体 (ニッケルクロム合金、316Lステンレス鋼(313L SS)、および炭化ケイ素) を選び、これまでと同様のプロセスにより8YSZとの2相複合膜を作製する。特に、発泡金属では金属の融点に依存する焼結温度の上限が大きな問題となる。易燒結性の微粉体を用い、スラリ―濃度を出来るだけ高め、冷間等方プレス処理を行って、焼結温度を低下させつつ8YSZ相の高密度化がどこまで可能かを見極めることが早急の課題である。
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Causes of Carryover |
運営費交付金の余剰分で消耗品費を大幅にまかなえたこと、コロナウイルスによる規制が長引き国際会議が延期となったことが主な理由による。本年度はこれまで中止または延期されてきた国際会議が復活しつつあり、旅費に充当する予定である。
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