2022 Fiscal Year Research-status Report
Development of ASOs which up-regulate back-splicing producing circular RNAs
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22K05315
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山田 剛史 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (80633263)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | RNA / アンチセンスオリゴ / 環状RNA / スプライシング / バックスプライシング |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、「細胞外から投与したRNA結合性低分子やアンチセンスオリゴ(AON)によって、細胞内の特定の環状RNAの生合成量を増大させることができるか?」というコンセプトを提案し、RNA結合性低分子NCDを用いて実現可能性を証明した。哺乳類の環状RNAは、一般的に一つあるいは複数のエキソンから構成され、「バックスプライシング」によって生合成される。バックスプライシングは、環状化するエキソンの上流と下流のイントロンが、水素結合等によって架橋構造を形成し、上流のイントロンに存在するブランチポイントアデノシンと下流のイントロンの5’スプライシングサイトが近接することで促進される。この架橋構造を促進する分子をデザインすることで、特定の環状RNAの生合成を促進させられるというのが我々のアイデアである。 NCDは、二重鎖RNA中に存在するUGGAA/UGGAA配列に強く結合し、二重鎖を安定化する。まず、環状化するエキソンの上流と下流のイントロン内にNCD結合部位を挿入したモデルpre-mRNAを産生するプラスミドを作成し、それを培養細胞に導入しモデル細胞を作成した。このモデル細胞にNCDを添加した所、NCD濃度に依存した環状RNA生合成量の増大を確認した。 上記のコンセプトをさらに発展させるため、AONを用いた検討を行った。具体的には環状化するエキソンを挟む上流下流のイントロンと水素結合して架橋構造を形成するAONをデザインし、NCDを用いた実験で作成したモデル細胞でAONの効果を検証した。結果、標的環状RNAは、AONの投与量に依存した増大を示し、最大で3.4倍増大した。一方、スクランブル配列では増大は認められず、AONがイントロン間の架橋構造を強化することで環状RNA合成量が増大したことが強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は、RNA結合性低分子に換え、論理的にデザインしたアンチセンスオリゴヌクレオチドによって同様のコンセプトが実現可能か検証した。モデルpre-mRNAを発現するプラスミドをトランスフェクションしたHeLa細胞を用い、circRNAであるcircZKSCAN1の生合成量の変化を定量した。具体的には、環状RNAの生合成機構「バックスプライシング機構」に基づき、環状化するエキソンを挟む二つの異なるイントロン間を架橋するように水素結合によって結合するブリッジングオリゴヌクレオチド(bridge-AON:BON)をデザインし、前述の過剰発現Hela細胞に投与した。circZKSCAN1の発現量は、RT-qPCRを用いて定量化し、最大で3.4倍の有意な増加を確認した。 さらに、ネイティブPAGE・熱融解UV測定によってブリッジ構造の高い熱安定性を確認した。また、ITCおよびSPR実験により、BONの標的配列への結合定数は10 nM程度であることが示された。 以上の結果より、合理的にデザインしたアンチセンスオリゴヌクレオチドによって細胞内の特定のcircRNAの生合成を増加させることが可能であることが示された。公表された結果と合わせて、細胞内RNAを標的とする一般的に使用される2つの主要な手法、すなわちRNA結合性低分子およびアンチセンスオリゴヌクレオチドの有用性を、モデル細胞環境でのcircRNA産生の増加において概念的に実証することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでのところ、細胞内RNAを標的とする場合に一般的に用いられる2つの主要なモダリティ、すなわち、RNA結合性低分子またはアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いて、環状RNA生合成を増大させることが可能であることを、モデル細胞において示すことができた。次は、モデル細胞環境で証明された概念を、内在性環状RNAの生合成の増加に適用可能か検討する。モダリティとしては、RNA結合性低分子より設計が容易なbridge-ONを用いる。バックスプライシングの駆動力の違いにより、内在性環状RNAは大きく2種類に分けることができる。一つは、環状RNAとなるエキソンに隣接する上流と下流のイントロン間に逆相補配列が存在し、それらの水素結合によってイントロン間が架橋するタイプ、イントロンに結合するRNA結合タンパク質の二量化によってイントロン間の架橋が促進されるタイプである。これまでの実験の結果より、オリジナルのpre-mRNAによって形成される架橋構造が不安定である方がより環状RNAの合成量の増大が大きいことがわかっている。つまり、後者のタイプの環状RNAの方がより標的として効果的であると考えられる。バイオインフォマティクス的手法により、(1) bridge-ONによる効果が見込まれ、(2) 薬学的に意義の高い環状RNAを調査する。(1)は、標的イントロン配列に対する結合エネルギーと局所的なアクセシビリティを考慮して設計する。
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Causes of Carryover |
本研究に関連した研究内容の、3月に開催された日本化学会年会への、共同研究者の口頭発表および参加を計画し、そのための予算を残していたが、急遽キャンセルしたため、7万円程度の額が残った。 残額は、本年度の物品費して使用する。
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Research Products
(12 results)