2022 Fiscal Year Research-status Report
デノボ・再利用経路に着目した時空間特異的な麻痺性貝毒生合成制御メカニズムの解明
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22K05327
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
長 由扶子 東北大学, 農学研究科, 助教 (60323086)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 代謝回転 / 生合成 / サキシトキシン / in vivo標識 / 長鎖ノンコーディングRNA / ニゲリシン |
Outline of Annual Research Achievements |
1.STX生合成におけるデノボ経路及び再利用経路の時空間特異性の解析:代謝回転研究用に最近開発したin vivo標識法を用いて、Alexandrium catenella(Group I)有毒株の15Nの取り込み挙動を観察した。15Nの取り込みプロファイルの変動からデノボ生合成と再利用生合成それぞれの二項分布成分の生産速度を算出し動的に解析する手法を確立した。 2. STX生合成遺伝子をターゲットとするmiRNAの探索:データベース探索したところAlexandrium属の渦鞭毛藻のmiRNAseqデータがすでに登録されていた。有毒無毒で差のあった生合成遺伝子sxtA4の3'非翻訳領域と相同性のある配列を検索したところ複数の配列がヒットした。いずれもmiRNAより長い長鎖ノンコーディングRNAと推測された。それらの配列を基に設計したプライマーを用いてA. catenella(Group I)有毒株のゲノムから重複PCRで増幅産物を得たため、同様な配列の存在が示唆された。 3.代謝阻害剤ニゲリシン添加系の変動解析:アミノ酸輸送活性阻害剤であるニゲリシンを添加した系のSxtA及びRbcLII発現量変動解析とin vivo標識データの動的解析により、ニゲリシンはSTX生合成のデノボ、再利用両生合成を抑制し、代謝を亢進させていると考察した。炭酸固定酵素ルビスコは植物の細胞で最も多くの窒素が分配されるタンパク質であり、その発現が上昇すると窒素含有二次代謝物であるSTX類縁体の生合成が低下し、代謝が亢進することが実験的に初めて明らかとなった。またニゲリシンが前駆体アミノ酸だけでなく、一部の生合成中間体の輸送も抑制しているのではないかという仮説を提唱できた。 遺伝子工学的な手法が適用できない本生物にとって代謝阻害剤とin vivo標識、免疫染色を組み合わせた解析が有用であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.STX生合成におけるデノボ及び再利用生合成の時空間特異性を解析するための、動的解析方法が確立できた。本手法は存在量からの解析では解明できない生合成と代謝のバランスを調べることができ、実際に2種の代謝阻害剤の添加系に応用して有用性が検証された。 2.STX生合成遺伝子をターゲットとするmiRNAを探索することを計画していたが、当初予期していなかったsxtA4の3’非翻訳領域に相同定のある長鎖ノンコーディングRNA(lncRNA)が見出された。lncRNAにもmRNAがリボソームでアミノ酸に翻訳されるまでの過程におけるmRNAの安定性を制御することが報告されているため、今後の研究に大いに役立つと考える。なお、別の生合成遺伝子sxtGの3'非翻訳領域についても同様の解析をしたが、相同性のある配列はヒットしなかった。遺伝子によって制御システムが異なる可能性も考えられることがわかった。 3.免疫染色による生合成酵素などの発現解析とin vivo標識による動的解析を組み合わせることで、これまで解析できなかった細胞内の変動が定量的に解析、考察できるようになった。有毒渦鞭毛藻の生長と毒生産のバランスの調節因子を探索する上で必要な情報の取得方法が確立したといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
1.生合成遺伝子sxtA4の3'非翻訳領域と相同性のあるlncRNAの発現と生合成速度の相関解析:当初はmiRNAseqを計画していたが、lncRNAの可能性がでてきたので計画を変更する。Alexandrium属の渦鞭毛藻有毒株のRNAから今回見出されたlncRNAの発現量をリアルタイムPCRで解析する。同時にin vivo標識データ、生合成酵素SxtA発現量データも取得しそれぞれの変動の相関を解析する。 2.モルフォリノ修飾アンチセンスオリゴの導入実験:1でsxtA4の3'非翻訳領域と相同性のあるlncRNAの発現変動と生合成酵素SxtAのmRNA及びタンパク質発現量、STX生産速度との相関がみられたら、その配列に対するアンチセンスオリゴを導入して変動が抑制されることを確認する。 3.小麦胚芽セルフリータンパク質合成系による生合成酵素の発現と機能解析:大腸菌で異種発現したSxtGが不溶性タンパク質であり、シャペロンタンパク質と共発現して可溶化しても機能がみられなかったことから、可溶化率の高い小麦胚芽無細胞タンパク質合成システムでの発現により機能解析を試みる。
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Causes of Carryover |
データベース検索でAlexandrium属の渦鞭毛藻のmiRNAseqデータが確認され、当初計画したmiRNAseqを実施しないことになったため次年度使用額が生じた。次年度にモルフォリノ修飾オリゴの導入試験及びセルフリータンパク質発現に使用する予定である。
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Research Products
(21 results)
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[Presentation] サキシトキシンの推定生合成中間体の合成と有毒藍藻および渦鞭毛藻における同定2023
Author(s)
袴田 真有, 石塚 颯, 安達 栞菜, 大澤 瞳生, 東海林 千容, 長 由扶子, 工藤 雄大, 此木 敬一, 大島 泰克, 長澤 和夫, 山下 まり
Organizer
日本農芸化学会2023年度広島大会
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[Presentation] 電位依存性ナトリウムチャネルに対するサキシトキシン合成誘導体の感受性評価2023
Author(s)
小林 巧, 吉尾 柊太郎, 千葉 修, 濡木 絢斗, 髙栁 優夏, 石塚 颯, 工藤 雄大, 長 由扶子, 山下 まり, 長澤 和夫, 此木 敬一
Organizer
日本農芸化学会2023年度広島大会
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[Presentation] 致死性海藻中毒原因物質ポリカバノシド類の作用機序2023
Author(s)
山下まり, 土肥裕花, 北大院農, 岩崎浩太郎, 佐々木理, 川島悠岐, 島田紀子, 工藤雄大, 長 由扶子, 此木敬一, 佐々木誠
Organizer
令和5年度 日本水産学会 春季大会
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