2023 Fiscal Year Research-status Report
フォールディング病のアクティブセーフティを目指すシグナル糖鎖産生調節分子の開発
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22K05335
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
戸谷 希一郎 成蹊大学, 理工学部, 教授 (80360593)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 糖タンパク質品質管理 / シグナル糖鎖調節分子 / フォールディング病 / 早期治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では高齢化社会の健康寿命の延伸に寄与すべく、対症療法に依存し、治療期間が長く、根治できないアルツハイマー病やパーキンソン病、骨粗鬆症、糖尿病などを研究対象とし、その疾患発症要因となる不良糖タンパク質蓄積に関わる小胞体の機能異常を是正する薬剤の開発に取り組んでいる。 小胞体は糖タンパク質のフォールディング状態に応じて、そのフォールディング促進/フォールディングチェック/リサイクル/分泌/分解を制御する糖タンパク質品質管理を担う重要な細胞小器官である。新生糖タンパク質を、これらの各品質管理工程へ正しく振り分けるために、タンパク質上で様々に構造が変化する糖鎖をタグとして活用し、交通整理されている。すなわち糖タンパク質品質管理の稼働状況は、小胞体内で生成されるタンパク質上の糖鎖構造プロファイルに反映される。我々はこの点に着目し、既に独自の糖鎖基質を用いて再構成した小胞体内糖鎖プロファイルに疾患の痕跡が現れることを報告し、これを用いた疾患早期診断の可能性を提起している。 この知見に基づき、疾患による糖鎖プロファイルバランスの乱れを是正することで疾患早期治療に資する薬剤開発に取り組んだ。これまでに、この目的のためにデザインした分解シグナル促進剤と分泌シグナル抑制剤の化学合成を実施し、いずれも標的化合物の合成に成功した。また分解シグナル促進剤に関しては、対象疾患のひとつである骨粗鬆症モデルマウス肝臓より抽出した小胞体画分に添加し、その効果を検証したところ、本薬剤が疾患によって減弱した分解シグナル糖鎖産生に関わるマンノシダーゼ活性を劇的に増強する結果を見出した。これは、本薬剤が糖鎖プロファイルバランスの是正に寄与することを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究構想で設計した分解促進剤および分泌抑制剤の化学合成にそれぞれ成功している。また分解促進剤については、その効果の検証にも取り組み、想定以上に高い薬理学的シャペロン活性を見出した。さらにこの薬剤の活用により疾患モデルマウス由来小胞体画分において、減弱した分解シグナル産生経路の活性回復の実証に成功した。以上により、本研究はおおむね順調に進展しているものと結論する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は効果が未検証である分泌抑制剤についても、分解促進剤と同様のアッセイに供し、その効果を検証したい。また開発した薬剤の効果をアルツハイマー病や糖尿病など多様なフォールディング病モデルにおいても検証し、その効果の一般性も検証したい。さらに当初計画には含まれないが、開発薬剤が直接作用する標的酵素の同定にも取り組みたい。そのために必要な架橋タグと蛍光色素を導入した第二世代の薬剤開発にも着手している。
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Research Products
(10 results)