2023 Fiscal Year Research-status Report
Amino acid transporters that transport mugineic acids-iron complexes and their roles in mammals
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22K05342
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Research Institution | Suntory Foundation for Life Sciences |
Principal Investigator |
村田 佳子 公益財団法人サントリー生命科学財団, 生物有機科学研究所・統合生体分子機能研究部, 特任研究員 (60256047)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
難波 康祐 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(薬学域), 教授 (50414123)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 鉄 / 小腸 / トランスポーター / ニコチアナミン / 植物性食物 / アフリカツメガエル卵母細胞 / 錯体 / アイソトープ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、植物性食物に豊富に含まれるニコチアナミン(NA)およびその鉄錯体が、小腸において吸収され、その後の代謝に至る鉄輸送の全体像を明らかにすることである。 1. 鉄およびNA鉄錯体投与による鉄欠乏回復実験:前年度での鉄欠乏回復実験の結果を踏まえ、今回は鉄濃度16.5 mMの鉄のみ、NA-鉄(1:1)錯体、生理食塩水の投与3グループに毎朝(日曜除く)0.1 ml経口投与し、1週間後、2週間後のヘモグロビンとヘマトクリット値の測定、および血清、肝、腎、脾臓などの鉄、銅、亜鉛濃度の測定を行い、マウスが鉄欠乏からどれだけ回復しているかを検討した。その結果、1週間投与後のヘモグロビン値と血清鉄濃度において、NA鉄錯体投与群は正常値を示し、鉄のみ投与群より回復していた。 2. 細胞およびマウス組織内での NA とその鉄錯体の検出: NA 鉄錯体トランスポーター、ZmYS1(トウモロコシ由来)、PAT1(ヒト由来)を各々発現させたアフリカツメガエル卵母細胞に 研究分担者である難波康祐教授が合成したNAダンシル標識鉄錯体を反応させたところ、細胞内で蛍光を検出できたので、同標識体が取り込まれたことが示唆された。また、これら標識体を投与したマウスの小腸凍結切片の抽出液から、質量分析(LC-TOFMS)によってNAダンシル標識体を同定することができた。 3. マウス小腸の二次元オルガノイド培養細胞での鉄吸収解析:マウス十二指腸および近位空腸由来の三次元オルガノイドから二次元オルガノイド培養細胞を作成し(同所属研究機関協働研究者;高橋俊雄、高瀬悠太)、55-FeおよびNA・55-Fe錯体を反応させて、各々反応後のアイソトープ鉄取り込み量をカウントした(京都薬科大学)。その結果、各々の小腸の部位で鉄吸収量が異なり、二次元オルガノイドが元の小腸の鉄輸送機能を保持していることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. 植物生体内に存在するキレート化合物NAが、鉄錯体として近位空腸からアミノ酸トランスポーターPAT1を介して吸収されることを報告したが、その後のNAによる鉄吸収効果(循環系への移行)は不明であった。鉄欠乏マウスに生理食塩水、鉄、NA-鉄錯体を1週間、2週間投与後の血中ヘモグロビン濃度と血清中の鉄濃度を比較した結果、血中のヘモグロビン濃度、血清中の鉄濃度は投与1週間後において鉄のみ投与群より、NA-鉄投与群のほうが有意に回復していた。この結果はNA-鉄錯体が鉄のみ投与よりも吸収が早いことを示している。2週間まで投与を続けると肝臓、腎臓、脾臓における鉄濃度は、通常食のマウスに比べて大幅に減少していたが、鉄投与群とNA-鉄投与群で回復に差がなかった。特に脾臓などの組織ではもっと長期の投与で鉄濃度が回復すると考えられる。 2. アフリカツメガエル卵母細胞やマウスの小腸凍結切片の抽出液から、LC-TOFMSでNAダンシル標識体を検出することができた。今後、この標識体を用いて、NA鉄錯体による代謝機構を明らかにするための実験を進める。 3. マウス十二指腸および近位空腸由来の三次元オルガノイドから二次元オルガノイド細胞を培養し、アイソトープ55Feおよび55Fe-NA錯体を投与した後、十二指腸、近位空腸でアイソトープ鉄の取り込みに違いが認められたことは、二次元オルガノイド細胞が鉄、NA-鉄輸送の役割をする遺伝子もしくはタンパク質を元の小腸から保持している可能性を示唆している。
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Strategy for Future Research Activity |
小腸からのNA-鉄錯体吸収とその後の体内輸送の分子機構をトランスポーターの分子レベルの基質認識に基づいて理解し、鉄欠乏症および鉄過剰症への応用研究に発展させるための基礎データを得る。そのために以下の研究を行う。 1. 鉄欠乏マウスのNA鉄錯体投与による回復実験:今年度行ったマウス鉄欠乏回復実験において、通常食のコントロール群と3種の投与群(鉄、NA鉄錯体、生理食塩水)の1週間、2週間投与における、血清、小腸、肝、腎、脾臓などの鉄、NA関連遺伝子を定量PCRで定量し、コントロールと比較することによって体内鉄輸送の分子機構を推定する。 2. マウス組織の NA およびNA-鉄錯体の検出: NA-鉄錯体輸送体(ZmYS1, PAT1)を発現させた細胞に NAダンシル標識鉄錯体を反応させて蛍光を観察することができた。このことから NAを投与したマウスの組織内の挙動を解明するために、NAダンシル標識体を用いて、 NA の局在の時間変化を観察する。また、MALDI-TOF-MS(イメージングMS)で NAや標識体およびそれらの鉄錯体を小腸や肝臓、腎臓、脾臓などで検出・定量することに挑戦する。 3 小腸の二次元オルガノイドでの解析:細胞内および基底側の55Feの取り込み量から、二次元オルガノイド培養で、もとの組織である十二指腸、近位空腸の鉄輸送機構が維持されていることが示唆されたので、鉄とNA鉄錯体の2種類の基質の取り込み、および排出トランスポーターの小腸での役割を明確にしたい。そのために、十二指腸および近位空腸から作成した二次元オルガノイド細胞において各々の鉄、NA-鉄輸送関連遺伝子を定量し、それらのタンパク質を抗体染色により発現を確認後、鉄の取り込みおよび排出活性を比較・評価する。
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Research Products
(5 results)